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TPPとWTO… 矛盾した国際条約が成り立つ“ぶっとんだ”カラクリ

かつて日本にもあった?外国技術を“マネ”するという国家戦略

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「最恵国待遇」とは、簡単に言うと、A、B、Cという国と付き合っていた場合、B国に一番良い条件を与えたなら、即時かつ無条件にA国とC国にもその条件を適用しなければならないということです。いかなる場合も、どの国も差別してはならない。

 WTOの加盟国が159カ国ですから、その中でたった一国とだけ、「ねえ、私たちだけで関税撤廃しようよ」と決めたら、即時かつ同時に159カ国全部との間でも関税を撤廃しなければならないことになるという、すごいルールです。

●なぜTPPやFTAが誕生する余地があるのか?

 しかし、ここに、素朴な疑問が生じます。

 WTOには「最恵国待遇」の規定があるのに、なんでTPPやらFTAが誕生する余地があるのでしょうか? 

 WTOへの加盟によって、全世界の自由貿易圏はすでに完成していることになるのではないでしょうか?

 TPPやFTAとは、要するに、「なかよしグループ」経済圏、「勝ってうれしい花いちもんめ」のようなものです。戦前には、似たようなグループ(ブロック経済圏)をつくってしまったばっかりに、グループ間でケンカ(第二次世界大戦)が始まってしまいました。その反省から、GATTやWTOはつくられたのです。

「一体どうして、こんなことに……」と思って調べてみたところ、すべての元凶はこいつにありました。

 「GATT第24条」

 こいつは、「近いうちに、関税を廃止するよ」とだけ言えば、例外的に関税の同盟や自由貿易協定を設立できることを、例外的に認めてしまっているのです。つまり、このたった一つの例外規定が、多国間の貿易交渉(FTA)を許し、TPPを産み落とし、果てはEU(ヨーロッパ共同体)のような巨大な地域共同経済圏を育ててしまったのです。

●TPPをめぐり乱れ飛ぶ議論

 さて、TPPに関しては、さまざまな意見が飛び回っています。

 「鹿鳴館で慣れないダンスを踊りまくって、やっと取り返した関税自主権(1911年)を、なぜ今さら放棄するようなマネをするのだ?」
 「米国だって、昔(南北戦争の頃)は国内産業を守るために保護貿易に徹していたじゃないか(しかも関税率は50~100%という、すごいものだったそうです)」
 「日本の美味しくて高品質の農作物を、世界に売り込む絶好のチャンスだ」

など、色々あります。

 TPPに反対される方の多くは、今回のTPPに限らず「いつだって、農業分野ばかりが誰かの何かの犠牲になってきた」と思われているかもしれません。例えば、日本は米(コメ)に関しては、戦時中の1942年に食糧管理法によって政府が流通を掌握し、戦後の高度経済成長に入ってからもその体制は続けられました。これは、「ショバ代をどんなに積まれても、ウチのシマでの商売はあきまへんな」と言うことです。

 しかし、1993年、ウルグアイラウンド通商交渉によって、ついにこれが壊されます。

 「あんたんとこが、そない高いショバ代を払うちゅーなら、まあウチ(の組)としても、まあ、オタクのメンツ立てなあかんなぁ」

ということになったわけです。この組には、別のショバでは自動車を売って商売しているのに、逆に一粒も他の組の米を売らせてこなかったという「弱み」もあったからです。

 しかし、組長は組員に対して、

 「まあ、高いショバ代取っとるさかい、うちのシマには簡単には入ってこられへん。心配せんどき。大丈夫やから」

と言っていたところに、今回のTPPがやってきたわけです。

 「ウチ(の組)は、もうショバ代取らんことにしたさかい、おんどれら、他の組のやつらより、旨くて安い米を作らんとアカンで」

と突然、組長が言い出したので、組員たちも黙ってはいられません。

 「おやっさん、そりゃ約束が違いまっせ」
 「うちのシマの田んぼ、壊滅ですやん」
 「あいつらの米(コメ)、安いだけでっせ。ほんで食うたら、うちのガキらが病気になるようなコメを売ってくるかもしれんのですぜ」
 「しかも、その危ないコメを、うちのシマで売ることを禁止することもできんらしいやないですか」
 「おやっさん!」
 「おやっさん!!」
 「おやっさん!!!」

と組員に詰めよられたところで、組長が切れます。

BusinessJournal編集部

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