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「【小説】巨大新聞社の仮面を剥ぐ 呆れた幹部たちの生態<第2部>」第69回

社長も編集長も不倫まみれの巨大新聞社、刷新なるか!?~いよいよ週刊誌暴露へ

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「吉須さん、結果がどうなるか見てからでいいでしょう。今、言い合いしても仕方ありません。それより、僕は『深層キャッチ』にどんな記事が載るのか、知りたいです」

 剣呑な雰囲気を変えようと、深井が婉曲に吉須を諫め、話題をすり替えようとした。しかし、太郎丸は不機嫌なままで、質問に答えようとしなかった。

「会長、機嫌を直してくださいよ。一応、今日は週刊誌がどんな写真を使い、どんな記事を載せるのか、教えてもらえると思っていたんです。会長は知っているんでしょう?」

 太郎丸はケーキを食べ終えると、コーヒーを一口啜った。すると、少し落ち着いたのか、パイプを咥え、問わず語りに話し出した。

「実はじゃな、今日、遅れよったのは『深層キャッチ』が大都、日亜両社に出しちょった質問状への回答を聞くためじゃった。午後3時が回答期限だったんじゃが、30分遅れて返事がきよったらしいんじゃ」
「どんな回答だったんですか」
「言わずもがなじゃ。『プライバシーに関わることにはお答えできません。虚偽の報道やプライバシー侵害があれば法的に対応します』という回答に決まっちょるじゃろ。問題はどんな質問をしよったかじゃ。質問をみちょれば、どんな記事になりよるか、推測がつくじゃろうが……」
「ああ、そういうことですか……」

 深井が納得したが、ここで吉須が容喙した。

「会長、『深層キャッチ』から質問書と大都、日亜両社の回答書のコピーをもらったんじゃないんですか。写真を提供したのは会長でしょ。それくらいの便宜供与を受けて当然でしょう」
「お主、ジャーナリストじゃろ。何を馬鹿なこと言っちょるんじゃ。写真週刊誌といえども、そんなもの、第三者に渡しよるわけないじゃろが。そりゃ、わしがコピーを寄こせ、と言いよれば、出すじゃろ。じゃが、“言わぬが花”ちゅうこともあるけんのう」

 太郎丸嘉一が不愉快そうな顔つきになったのをみて、また深井宣光が窘めた。

「吉須さん、そこまで、要求しちゃまずいです。でも、会長、両社にどんな質問を出したかは聞いているんでしょ?」
「ふむ。どんな質問をしよったかは聞いちょる。松野と村尾の話のほかに、両社の編集局長の過去の女性スキャンダルも質問しとるんじゃな」

 大都の北川常夫、日亜の小山成雄のことだ。記者としての能力は同世代の吉須と深井に比べれば、月と鼈くらいの違いがあるが、旧聞とはいえ、両社の出世の条件である女性スキャンダルを抱え、今や次期社長候補に躍り出ている。太郎丸が満足げに答えると、吉須がまた冷や水をかけた。

「そりゃ、当然でしょう。2週間前に取材を受けた時に詳しく話しましたからね。村尾の“二股不倫”のことはどうなんですか」
「……。まあな、写真が撮れんかったからのう。わしの秘書の杉田(玲子)君のことは質問しちょらん。じゃが、多分、記事の方では社長二人の不倫だけじゃのうて、両社の堕落が編集局を席巻しちょることが書かれとるんじゃ。それでええじゃろ?」

 太郎丸が冷静さを取り戻し、答えると、深井が引き取った。

「記事は“読んでのお楽しみ”でいいじゃないですか」
「でも、会長は二人を退陣に追い込みたいんでしょ。だから、聞いているんです」

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