
1974年に神奈川県横浜市で創業した「ラーメンショップ吉村家(よしむらや)」を源流とする「家系ラーメン」。ラーメン業界の一大ブランドとなったが、最近では、本家の流れを汲まないどころか、本家とは縁もゆかりもない「○○家」と名乗る店が増え続けている。
ここ2、3年の間にも、全国各地に家系ラーメンのチェーン店が続々と誕生しているが、何も知らずに入ったが最後、「家系って、こんなもの?」とがっかりするような店も少なくない。
そもそも、本来の家系ラーメンとは、厳密にいえば本家「吉村家」が認めた直系店舗だけを指し、認定証を提示している直系の店は、全国にわずか10店舗足らずしか存在しない。
にもかかわらず、各地に「○○家」を名乗るラーメン店が増え続け、事情を知らない客に「家系」に対する間違った印象を与えてしまっているのだ。なぜ、勝手に名乗る亜流の「家系」が増え続けているのだろうか。
家系ラーメン、急増の背景
まず、あらためて家系ラーメンの定義をおさらいしておこう。
前述のとおり、家系ラーメンの発祥は74年に横浜で創業した「ラーメンショップ吉村家」。創業者の吉村実氏が創作したラーメンは、濃いめの醤油だれに鶏油を浮かべた豚骨醤油スープに、酒井製麺による平打ち(正確には縦切り)麺を合わせたもの。これに具材として、チャーシュー、ほうれん草、海苔3枚、薬味ねぎが乗っているのが特徴だ。
吉村氏は、86年に2号店として「本牧家」をオープン。さらに、そこから独立した「六角家」など、どの店にも屋号に「家」がついたことから、後に「家系ラーメン」と呼ばれるようになった。
「当初は、吉村家の流れを汲む弟子や孫弟子の店だけだったのですが、90年代後半から、吉村家とは直接関係のない店が登場し、『家系ラーメン』を名乗るようになりました。さらに94年、新横浜ラーメン博物館に六角家が出店したあたりから、2000年前後のラーメンブームに同調するかたちで、家系ラーメンブームが起こったのです。
吉村家・創業者の吉村氏は、00年代に入って、やたらと家系を名乗る店が増え出してからは、直弟子が出した家系店舗には『総本山直系』と名乗らせています。また、吉村家が認めている直系店以外でも、たどっていくと吉村家にたどり着く店がありますが、これも本来の家系ラーメンだと思います。例えば『六角家』などは吉村家の直系ではなく、吉村氏も認めてはいませんが、たどれば吉村家に行き着くので本来の家系ラーメンといっていいでしょう」