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『君の名は。』誰も説明できない公開初週異常ヒットの謎…隠れた『シン・ゴジラ』効果?

文=編集部
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『君の名は。』誰も説明できない公開初週異常ヒットの謎…隠れた『シン・ゴジラ』効果?の画像1『君の名は。』公式サイトより

 映画会社の東宝は自社公開の『シン・ゴジラ』や『君の名は。』の大ヒットもあり、2017年2月期連結決算の最終利益が前期比28.7%増の333億円と、過去最高益を達成した。このことからも、昨年は邦画の当たり年だったということがわかる。

 そこで、昨年に高い興行成績を記録した“あの邦画”は、なぜヒットしたのか、前回5月5日付当サイト記事『非傑作「君の名は。」、なぜベタなご都合主義的でも「おもしろい」と受け取られた?』に引き続き、映画業界関係者4人に自由勝手に語ってもらった。

プロデューサー川村元気氏の影響

――昨年の映画界の主役といえば、興行収入240億円を突破し、邦画歴代興行収入では『千と千尋の神隠し』に次ぐ2位となった『君の名は。』が挙げられると思います。できることなら同作のようにエンタメ性に富んだメジャー作品を手がけたいと思っている監督は多いはずですが、よりによってクセの強い作風で知られた新海誠監督が、なぜそれをできたのででしょうか。

C 前作の『言の葉の庭』(13年)から東宝と一緒にやるようになって、14年のZ会のCMで組んだ田中将賀氏をキャラクターデザインに起用し、プロデューサーがヒットメーカーの川村元気氏。この布陣は、ヒットしたひとつの大きな要素ですね。いろんなところで指摘されている点ですが。

B 確かに絵柄がポップになったのは大きい。主人公の三葉はすごくかわいいし、僕もすごくそこにひかれた(笑)。それと、今までの新海作品はすごくクセがあったんだけど、新海監督自身は一般に受け入れられたいっていう意識は、以前からすごく強かったみたいね。そういう意味では、川村さんがついたのは新海監督にすれば追い風だった。

C 川村さんは『電車男』(05年)だったり『モテキ』(11年)だったり、サブカルをエンタメ化するのが得意なんでしょう。

A RHYMESTER(ライムスター)の宇多丸も「プロデュースの勝利」って言ってたよ。

D でも、個人的には川村さんがかかわるって知った時点で、興行的に失敗するという意味ではなくて、「この映画はダメだな」って思いました。細田守監督もあの人がかかわり始めた『おおかみこどもの雨と雪』からおかしくなっちゃったし。元からのファンが求める毒みたいなのが抜けて、興行寄りになっちゃうんです。インディーズ映画がハリウッド映画になっちゃったみたいな。

C 深夜バラエティがゴールデンに進出したみたいな?

D そうそう。自分の好きなものには近づかないでほしい。私の周りの新海ファンは『君の名は。』に幻滅している人、結構多いですよ。

説明できない初動の驚異的な数字

C そうなんですか? 僕は新海監督の作品は大好きですけど、『君の名は。』は楽しく観られました。確かに隕石が落ちるまでの展開は新海監督じゃなくてもつくれそうですが、その後のすれ違いに新海監督らしさを感じられて。

B 確かに。『ほしのこえ』(02年)とか『秒速5センチメートル』(07年)みたいな。

C そうです。というか、『君の名は。』で新海監督を知った人は、ラストシーンを「どうせ出会うんでしょ」って決めつけて観ると思いますけど、昔からの新海ファンだと「もしかしたら、2人は出会わないかもしれない」ってドキドキしながら観られるんですよ。そこがもともとの新海ファンも今作を楽しめた大きな要因だったと思います。私は「出会うな、出会うな!」って念じながら観てて、で、ラストで結局出会えちゃったから、ちょっと残念だったんですけど、あとから思うと「大衆向けにするなら、そりゃ出会うよな」と納得しました。

B 展開はベタに思えたけど、ファンにはそういう葛藤もあったんだね。

――内容的には、みなさん相応におもしろいとの見解ですが、それにしてもこの興行成績は異常です。どう説明すればいいのでしょうか?

A 映画業界の人だって、みんな本当のところはわかってないよ。初動の話をすると、映画の公開日はだいたい土曜日なんだけど、その映画がどれくらいの興行成績を収めるのかは、最初の土日ですべてが決まる。初週が3億だったら大ヒットと言われるんだけど、『君の名は。』は金曜日の公開で、初週だけで約12億もいっている。

D なんで最初からこんなに客が入ったんでしょうね?

A それが、いろいろと調べてみたんだけど、よくわからないんだよね。その後の観客動員数の伸び方に関しては、口コミとかメディアからの扱われ方が変わったから、という説明もできるけど、初動でこれはジブリレベルの異常な数字。「宣伝が盛り上がっていたから」っていう意見もあるものの、業界の人間からすれば、他の映画と比べて東宝が特別に力を入れて宣伝しているようには感じなかったし、もちろん公開したばっかりだから、口コミってわけでもない。

B 東宝的には、その前の月に公開した『シン・ゴジラ』が本命だったから、ビックリしただろうね。

A とはいっても、『シン・ゴジラ』も大ヒットしてたから、『シン・ゴジラ』の上映前に流れる予告で『君の名は。』を多くの人に発信できたことが初動につながった可能性もある。『シン・ゴジラ』の監督は庵野秀明だから、どちらかといえば新海ファンと客層がかぶってそうだし。

C 試写会の段階で、映画関係の記者の間ではめちゃくちゃ評判よかったですよ。間違いなくヒットはするだろうと。もちろん、ここまで興収が伸びるなんて誰も予想してなかったでしょうけど。

B ますます謎が深まるね。

D ちょっとオカルトチックな話をすると、三葉の友達の男の子がオカルト雑誌の『ムー』(学研プラス)を読んでたじゃないですか。で、本当に2017年って、地球すれすれを通過する隕石がいっぱいあって、しかも中国が打ち上げたスペースデブリも落下する可能性があるってNASAが発表してるんですよ。

A まさしく『君の名は。』じゃん。

B つまり、そういう危機に人類が瀕しているのをみんな本能的に察知していて、それをテーマにした映画を無意識で観に行ってしまったと。

D あり得ないとはいえないですよ(笑)。

(構成=編集部)

※次回へ続く

BusinessJournal編集部

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