失業率から漏れた「働けない人=ミッシングワーカー」、103万人の悲惨な実態
総務省の労働力調査によれば、今年4月の完全失業率は2.5%。リーマンショック直後の2009年7月に記録した5.5%と比べて半分以下になった。完全失業者数も、この間、364万人から180万人へと激減している。
一人当たりの求人数を表す有効求人倍率も昨年から常時1.5倍を超えていることからすれば、国内の雇用情勢は空前の活況を呈していることになる。
そんななか、6月2日に放映されたテレビ番組『NHKスペシャル ミッシングワーカー 働くことをあきらめて…』が大きな話題を呼んだ。
親の介護や転職をきっかけに心身を病み、長期間働けない状況に陥ってしまった労働者にスポットを当てたドキュメンタリーだ。同番組によれば、求職活動をしていないため雇用統計上の「失業者」に反映されない状態=ミッシングワーカーは、103万人にも上るという。
そのような人たちを統計に含めれば、実際の失業率はもっと大きな数値となるはずで、我々の生活実感にも近づく。ミッシングワーカーの実態は、わが国におけるセーフティーネットの脆弱さを、改めて浮き彫りにしたといえる。
今回は、2017年12月27日付本連載記事『雇用保険、給付金を大幅削減で積立金6兆円に膨張…失業者にカネを払わない日本の失業保険』に続いて、日本のセーフティーネットについて考えてみたい。
雇用保険を受給できず、生活保護でかろうじて生活
筆者が1年ほど前から継続して相談にのっていたKさん(30代男性)から、このようなメールを受け取った。
「社会福祉協議会へ生活福祉資金貸付の相談に行きましたが、『要件に該当しない』との理由で駄目でした。なるべく生活保護は受けないようにしたいと考えていますが、この状態が続くとやむを得ないことになると思います」
会社都合で警備会社を退職した彼は、とりあえず90日分の失業手当を受給できるうえ、かなり熱心に求職活動に励んでいたため、個別延長給付60日も適用になる見込みで「それまでには決まるはず」と、筆者はタカをくくっていた。
ところが、またたく間に3カ月が経過し、見込み通り個別延長が適用になったものの、5カ月経過しても、なお就職は決まらなかった。光熱費の支払いが滞るなど、生活費のデッドラインがヒタヒタと迫っていた。
意を決して市役所福祉課に相談に出向いたものの、初回は制度の説明されただけ。何度か足を運び、ようやく生活保護の申請ができたのは2週間後。このとき市から緊急貸与を受けた2万円は、近日中に送電を停止すると通告されていた電力会社への支払いに消えたという。
さらに申請から3週間後、役所の担当者が自宅を訪問調査のうえ、わずかな年金で生活している母親との世帯全体の窮状をみて、生活保護の支給が決定した。
その直後に就職が決まったが、最初の給与が出るまでの2カ月間は支援が必要との判断から保護は継続されることになり、危機一髪のところでKさんは生活破綻を免れた。