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海老名市ツタヤ図書館、年間税金投入が市直営時代の2倍…市、委託契約更新を強行

文=日向咲嗣/ジャーナリスト

「選定委員9人のうち7人が市の職員でした。そのなかに図書館の専門家はひとりもいないのですから、ロクに図書館運営能力の審査もせずに決めたというのが実態だったと思います。あれだけ問題が噴出したのですから、やはり専門家がひとりでも入って、今までの選書のやり方、配架の問題、分類の方法などをきちんと審査すべきだったと思います。また、評価の基になった教育委員会の指定管理者についての審議でも、委員は良いことしか聞かされていない。私が議会で質問しているような悪いことは、一切報告されずに隠蔽されている。(CCCの運営は)良いという結論を導き出すための作業になっている。これでは、茶番劇だと言われても仕方ないでしょう」

 選定委員9人中7人が市の職員だった理由を海老名市の担当部署に聞くと、「今回は、図書館を管轄する教育委員会と、公民館を管轄する市長部局の両方に関係していましたので、その双方から選定委員が出ることになったため。選定委員の(官と民の)バランスは、海老名市における他の指定管理者募集と同じ」という回答だった。

 また、「選定委員のなかに図書館の専門家はいるのか」との質問には、「特にはいない」とのこと。8月から10月にかけて3回開催された指定管理者選定委員会の内容は、「12月議会で正式に決定されるまでは公開できない」と言う。

 とにかく、「CCCありきではないか」と再三指摘され、透明性が何より求められるはずの事業者選定プロセスにおいて、今回何ひとつ「なるほど」と納得できるものがなかったことが、海老名市の迷走ぶりを表している。

 前出の山口議員は、こう続ける。

「毎年、(直営時代の2倍となる)3億円もの税金が投入されていることを、海老名市民は知らないのです。CCCのおかげで図書館が良くなったと思っている市民も多いですが、どんな施設も湯水のごとくお金をかければ、見てくれが良くなるのは当たり前です」

都合の悪い部分は隠して高評価を演出

 最後に、海老名市の「図書館を考える市民の会」の西平洋子会長に、今回の市立図書館指定管理者決定に至るまでのプロセスについての感想を聞いた。

「とにかく、市長は自分の思うようなメンバーで、都合の良いところだけを取り上げ、審査の対象にしたという印象です。

 アンケートでは、年中無休、9時から21時までの開館、明るくきれいになった、スタッフの対応がいい、という良い評価だけを紹介し、「80%近くの人が満足」とされました。市はこのアンケート結果の詳しい内容を公表することなく継続の根拠としています。

 継続の2つ目の理由である第三者評価では、1日だけの作業で、決められた項目だけを評価したそうです。それを高評価といわれても、納得できるものではありません。

 市長は「図書館法は古い。10年、20年先の少子高齢化を見据えた見方が必要。ひろがる、つながる、みんなの図書館」とおっしゃいます。しかし、説明がないものですから、どのような図書館にしたいのか、理解できません。

 私たちは「本が古い。書架の上のほうは手が届かない。探しにくい。CDの購入がない。雑誌が座間市の3分の1しかない。といったことを要望していますが、聞いてもらえません。CCCには何も要求することなく、違反をしてもペナルティーを課すことなく、年3億2000万を支払っています。議会で半数を占める大会派は沈黙したままです。私たちは根気よく改善を求めていくしかありません」(西平氏)

 今回の選定過程を振り返ってみると、市長と市当局サイドの“現状維持”に対する強い執着がかいまみえる。それこそが「CCCありきでは」と疑われる、不透明な選考を生んでいるように思えてならない。ここで方向転換すれば、自分たちが行った「画期的な取り組み」を失敗と認めなければならないからだろうか。

 地元メディアも、今回の指定管理者更新について、「従来の図書館像にとらわれない『改革』の試みは、継続される見通しとなった」と書いているが、客観的な評価による反省と軌道修正なしに続ける「先進的な試み」は、ただ被害を大きくするだけの“暴走”でしかない。

 今回の指定管理者継続によって、海老名市の図書館正常化への道程は、さらに遠のいたといえるのかもしれない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

海老名市ツタヤ図書館、年間税金投入が市直営時代の2倍…市、委託契約更新を強行の画像22018年8月から10月にかけて3回実施された選定委員会のメンバー。選定結果発表後に公表された情報によると、9人の委員のうち7人が市の幹部職員だった。
海老名市ツタヤ図書館、年間税金投入が市直営時代の2倍…市、委託契約更新を強行の画像32018年1月に開催された教育委員会で委員に説明された資料。民間事業者の成果が必要以上に強調され、過去に起きた不祥事には一切触れていない。

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