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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

うどん、過去にカドミウム中毒事件も

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授

カドミウム

(1)1966年、都内の大学や事業所等9カ所で同じ日の昼時に、うどんを食べた人3640名のうち369名に食後30分~2時間で、吐気、嘔吐、悪寒、頭痛を主な症状とする食中毒が発生しました(参考資料2)。食品衛生監視員の調査により同一のメーカーのものであることがわかりました。残品のほかに、自動製麺機で製造したうどんから10~40mg/kgのカドミウムと同程度の亜鉛が検出されました。

 カドミウムに汚染した原因は、めんを入れて茹でる金属性バスケットの一部にカドミウムメッキがされていたためでした。さらにめんを茹でるお湯にミョウバンを使用していたために酸性となり、カドミウムが溶け出して、うどんが汚染されたことがわかりました。責任者の話によると亜鉛メッキのバスケットが一部古くなったのでメッキを依頼したところ、依頼先で亜鉛メッキよりカドミウムメッキのほうが綺麗だということで、サービスのつもりでカドミウムメッキをしたということでした。中毒を起こした人が食べた量はわかりませんが、カドミウムの急性中毒と考えています。

(2)1955年、富山県神通川流域で主として更年期を過ぎた、妊娠回数の多く、居住歴がほぼ30年程度の農村婦人に腎尿細管障害と骨軟化症、貧血などを合併した疾患が多発していることが報告されました。激しい痛みで「痛い、痛い」と苦しみ亡くなることから「イタイイタイ病」と名付けられました。患者の各臓器のカドミウム量が異常に高かった原因は、上流の鉱山廃水からのカドミウムが土壌などを汚染し、そこで栽培された米や作物を摂取したことによるもので、198名が公害であると認定されました(以上、平成27年版環境白書を一部改変)。

 現在、玄米および精米中にカドミウム及びその化合物が0.4ppm(mg/kg)以下(カドミウムとして)という規格基準があり、それ以上に検出された米は食用としてではなく糊等の加工用に使用されています。その他に清涼飲料水の原水や製品、水道水にはそれぞれ厳しい基準値が設けられていますが、違反は検出されていません。カドミウムは米や大豆などの農作物や海産物からも微量ですが検出されます。食品からの人のカドミウムの一日摂取量は日本人で20~60マイクログラム/日といわれています。しかし、イタイイタイ病の発生地域では500マイクログラム/日以上のカドミウムを摂取していたと推定されています。

(文=西島基弘/実践女子大学名誉教授)

【参考資料】
1)西洋事物起源(一)ヨハン・ベックマン著(特許庁内技術史研究会訳)岩波文庫p206-228

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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