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日本の「ごみ処理」が売られるⅠ(2)

安倍政権、水道の次は「ごみ処理」も長期包括契約による民営化の動き…原資は国民の税金

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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 これに対して、柳泉園組合における長期包括契約は、清掃工場の運営管理を「包括的」かつ長期間にわたって民間委託するというものである。そのうえ、委託された民間事業者は、焼却炉の大規模改修事業工事の必要性有無や工事内容も判断して進めることができ、これまでの民間委託とは一線を画し、インフラ部分の整備についても実質担い、本格的な民営化に限りなく近いかたちといえる。その意味では、運営管理をゆだねる水道事業の民営化よりも、さらに民営化を進めた方式といえる。

 こうした民営化の動きが他の清掃工場にも広れば、委託先の民間事業者が国際的巨大企業の企業再編のターゲットとなる可能性もあり、堤未果氏が『日本が売られる』(幻冬舎新書)で警鐘を鳴らす事態に直結する危うさを含んでいるといえる。

 次に、柳泉園組合で進められつつある長期包括契約がどのようなものかを見ながら、その問題点を探りたい。

 柳泉園組合は、3市のごみを共同で焼却するための清掃工場であり、そこでかかる事業費は3市から拠出される分担金等、つまり税金で賄っている。場所は3市の西端にある東久留米市と東村山市の市境である。

 地方自治法上は特別地方自治体であり、無駄な支出を監視する議会や監査委員会もあり、柳泉園議会は3市の市議会議員が1市3名づつ選出され、年間4回定例的に開催される。

 今回の長期包括委託契約では、柳泉園組合のほぼすべての業務を15年間にわたり民間会社に委託する計画案(約150億円)が提案されてきた。年間約10億円の分担金は、西東京市が約5億円、東久留米市が約3億円、清瀬市が約2億円になり、決して安い金額ではない。年間10億円という金額は、柳泉園組合の公債返還額を除く通常時での事業費約20億円の半分である。

 ところが、当初からこの計画は、全体像がつまびらかにならないという問題を抱えていた。この計画の最大の目的として、約200億円の事業費が2~3割程度、43億円安くなると説明されてきた。しかし、もともとなぜそのような長期間にわたる包括的な委託契約が必要なのか。なぜ経費が200億円も掛かるのかなどが、論理立てて、説明されることはなく、長期間結べば、“安くなるから”というのが契約理由に関する説明だった。これでは、正札での販売実績がないのに多数購入すれば値段を正価から格安にするかのように謳う“大幅割引宣伝”と変わらない。

 そして、この柳泉園組合による契約理由の説明を、議員がチェックすることなく、そのまま議員は住民に対して「安くなるから」と説明してきた。ごみの処理、特に今回のような焼却炉を持つ清掃工場は、周辺環境や周辺住民の健康に影響したり、災害時の緊急対応が求められる。それだけに、民営化の議論は慎重に進める必要があった。

 次回は、住民監査・住民訴訟を行った市民グループが明らかにした長期包括契約、ごみの処理の民営化の驚くべき実態に迫る。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)
  
※次回へ続く

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