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片田珠美「精神科女医のたわごと」

多発する“親による子殺し”の連鎖…「我が子=所有物」という親の意識こそ諸悪の根源

文=片田珠美/精神科医
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多発する“親による子殺し”の連鎖…「我が子=所有物」という親の意識こそ諸悪の根源の画像1
「gettyimages」より

 富山県富山市で2日、6歳の長女を殺害したとして、母親の萩潤子(ひろこ)容疑者が殺人の疑いで逮捕された。萩容疑者は、「娘を殺し、自分も死のうと思った」と供述しているという。

 1日には、3歳の次女を殺害したとして、父親の羽山和宏容疑者と母親の有布子容疑者が殺人容疑で逮捕されており、「借金で生活が困難になり、無理心中をしようとした。娘を殺害した後、実行できなかった」と供述している。

 9月にも、福井県永平寺町で、両親が共謀して中学2年の長女を殺害した後、父親は自殺し、母親の中川洋子容疑者は殺人容疑で逮捕された。洋子容疑者は、「夫が娘の首を絞めて殺した」と供述し、自分も死ぬつもりだったとほのめかしているようだ。

 いずれの事件も、親が自殺願望を抱き、我が子を道連れに無理心中を図ったが、死にきれなかった可能性が高い。

慈悲による子殺し

 このように親が子どもを道連れに無理心中を図る事件は、欧米でも発生している。ただ、欧米には「心中」という言い回し自体が存在しない。心中に相当するのは、英語では「double suicide(重複自殺)」であり、母子心中は「maternal filicide-suicide (母親による子殺し-自殺)」、 父子心中は「paternal filicide-suicide (父親による子殺し-自殺)」ということになる。

 こうした表現自体に表れているように、日本で親子心中と呼ばれている事件は、欧米ではあくまでも子殺しの枠内でとらえられている。私も、親子心中という情緒的な言葉よりも、「自殺を伴う子殺し」と呼ぶほうが適切だと思う。

 このような「自殺を伴う子殺し」は、さいたま市で小学4年生の進藤遼佑くんが殺害され、義父の進藤悠介容疑者が逮捕された事件について寄稿した際に提示した子殺しの分類に従えば、「慈悲による子殺し」に該当する。

 我が子を殺すという親として最も重い罪を犯しているのに、なぜ「慈悲による子殺し」なのかと疑問に思う方が多いかもしれない。なぜかといえば、このタイプの子殺しは、自殺願望を抱いている親が、「自分が死んだ後、子どもだけ残されるのは不憫だ」「一緒に連れていくほうが子どものため」などと考え、子どもを道連れにするからだ。

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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