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多摩川と荒川、氾濫寸前…東京23区、浸水の危険があるエリアマップ 江戸川区は要警戒

文=深笛義也/ライター
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東京・原宿の竹下通り。いつもは多くの人で混雑している(上)が、現在、人影はない(下)(写真:AFP/アフロ)

 過去最大クラスとされる台風19号が、東海地方から関東地方に上陸している。すでに東京都江戸川区や神奈川県横浜市中区などの一部地域では自治体から避難勧告が出されている。特に現在警戒されているのは、荒川と多摩川の水位が上昇していることだ。すでに関東地方整備局と気象庁は氾濫危険情報を発表し、警戒レベル4「全員避難」としており、いつ氾濫してもおかしくない状態となっている。

 たとえば海抜ゼロメートルの場所が7割を占める江戸川区は、大規模水害が起きると、ほぼ全域が1週間以上にわたり浸水すると指摘されており、多くの住民たちが避難している。

 当サイトは2018年5月3日付記事『東京、台風による浸水想定エリアマップ発表…墨田区や江東区で浸水10m超も』で、台風到来時に浸水の恐れがある東京23区内のエリアを紹介しているが、今回、改めて同記事を再掲する。

---以下、再掲---

 大雪には弱い東京だが、大雨には強いはずではなかったのか――。

 スーパー台風が上陸すれば東京23区の3割が浸水するという、東京都港湾局の発表を聞いた時に、筆者はそう思った。地下40メートルまで下り、「溜池幹線」を見たことがある。直径8メートルほどのその巨大トンネルが、どんな豪雨でものみ込んでくれると信じていた。過去に何度か氾濫したことのある、神田川沿いのマンションに筆者は住んでいる。氾濫時のためのブザーが部屋にはあり、マンション入り口には高さ1メートルほどの防水板が備え付けられている。だが台風が来ても使われたことはないため、「無用の長物」と思っている住人も多い。

 東京都港湾局に聞いたところ、発生する浸水は台風の大雨によるものではないという。3月30日に同局から発表されたのは、「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」。浸水は、台風による大雨ではなく、高潮によって起こるのだ。高潮とは、台風や発達した低気圧が通過するとき、潮位(海水面)が大きく上昇する現象だ。

 その1つは、「気圧低下による吸い上げ効果」によって起こる。それはどういうものか。

「台風や低気圧の中心では気圧が周辺より低いため、気圧の高い周辺の空気は海水を押 し下げ、中心付近の空気が海水を吸い上げるように作用する結果、海面が上昇します。 気圧が1ヘクトパスカル下がると、 潮位は約1センチメートル上昇すると言われています」(港湾局の発表資料より)

 もう1つ、「風による吹き寄せ効果」によって起こる。

「台風や低気圧に伴う強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水は海岸に吹き寄せら れ、海岸付近の海面が上昇します。この効果による潮位の上昇は風速の2乗 に比例し、風速が2倍になれば海面上昇は4倍になります」(同)

 台風が襲来すれば、この2つが複合的に起こる。今回発表された浸水想定区域図は、日本に上陸した最大規模の昭和9年の室戸台風を基本としている。同台風の気圧は、910ヘクトパスカルであった。最悪の事態を想定し、潮位が一定の条件に達した段階で、堤防は決壊、浸水した水を排除する施設(排水機場等)が機能停止することを見込んで、想定区域図はつくられている。

葛飾区と江戸川区の一部は5メートル以上の浸水

 想定区域図によると、荒川沿いの墨田区と江東区の一部は、10メートル以上の浸水。その区域以外の墨田区と江東区、葛飾区と江戸川区の一部は5メートル以上の浸水となっている。3メートル以上浸水する区域は、北区、荒川区、中央区、千代田区、港区、品川区に散見される。5メートル以上の浸水となるところでは、浸水の継続期間が1週間以上に及ぶ区域も多い。

 堤防の決壊で記憶に新しいのは、2015年9月の関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫だ。この時は、20名の死者、住宅の全壊が81棟、半壊が7090棟に及んだことが消防庁によって発表されている。これは高潮ではなく豪雨によるものだが、堤防の決壊が人口密集地で起これば、これ以上の災害に及ぶことも考えられる。

 予測ができない地震と異なり、台風や低気圧の接近は、どのくらいの大きさの台風がどのようなルートでやってくるのか、気象庁から発表される。高潮の発生については危険の度合いによって注意報、警報、特別警報が発表される。それに応じて災害対策基本法に基づき各市区町村が、状況に応じて避難準備情報、避難勧告、避難指示を発令する。

 台風が襲来すれば、高潮だけでなく、豪雨もやってくる。3月30日、東京都の建設局、下水道局は「神田川流域について、想定最大規模降雨による浸水予想区域図」を発表した。神田川の氾濫は完全に過去のものになったわけではなく、時間最大雨量153ミリメートルの豪雨が発生した場合、2~3メートルの浸水が予想されている区域も少なくない。

 1メートル程度の浸水でも、交通の遮断によって取り残される可能性があり、ビルの上層階への退避では不十分だ。市区町村が発表しているハザードマップなどを参考に、ふだんから避難する区域を決めておき、地震対策と同じく、非常用の持ち出し品をまとめておくことが必要である。
(文=深笛義也/ライター)

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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