2018年12月30日に発効した、米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)参加11カ国の協定「TPP11」、19年2月1日に発効した日EU経済連携協定、そして今年1月1日に発効した日米貿易協定。これにより、世界のGDPの59%、貿易額23兆ドル、人口13億4000万人という巨大市場が形成され、日本はかつて経験したことのないメガ食料輸入自由化に直面することになった。
これらの貿易協定で、農水産物の関税削減・撤廃がなされ、これまで以上に農畜産物が輸入される。TPP11により牛肉と豚肉の関税が削減され、TPP11発効半年で牛肉輸入量は前年同期比5%増の24万5720トンに及んでいる。カナダ産(同82%増)、ニュージーランド産(同56%増)の輸入も急増している。同様に豚肉輸入量は同4%増の39万4913トンに上り、メキシコ産(同13%増)、カナダ産(同4%増)の輸入が目立っている。
そして日米貿易協定により米国産の牛肉、豚肉、農産物が雪崩を打つように輸入されることになる。現に1月に入り大手スーパーなどでは米国産の牛肉や豚肉の大幅値引きセールが展開されている。
しかし、安い牛豚肉が手に入ると喜んではいられない事態に日本の食卓は直面している。輸入牛肉は、米国産、オーストラリア産、カナダ産、ニュージーランド産牛肉ともに発がん性が指摘され、EUやロシアや中国で輸入が禁止されている成長促進ホルモン剤が使われた牛肉が、日本に輸入されている。米国産牛肉は、成長促進ホルモン剤の使用が禁止されている国産牛肉に比べて、女性ホルモンのエストロゲンが600倍も高いという検査結果も出ている。オージービーフとして定着しているオーストラリア産牛肉にも成長促進ホルモン剤は使われている。
輸入牛肉の輸入量の増加に伴い、乳がんなどのホルモン系がんが増加しているというデータも公表されている。
それだけではない。アメリカをはじめほとんどの輸入豚肉には、成長促進目的の飼料添加物である塩酸ラクトパミンが残留している。発がん性があるとしてEU、中国、ロシアでは塩酸ラクトパミン残留の豚肉の輸入を禁止している。また、β作動薬作用があり、心疾患を持っている人は摂取を避けるべきだと指摘されている。
ポストハーベスト農薬問題
チーズも輸入が急増している。昨年2〜6月のEU産チーズの輸入量は4万6000トンで、前年同期を20%上回っている。輸入チーズはインフルエンザ様の症状を招き、妊婦の流産を引き起こすリステリア菌の汚染が懸念されている。また、輸入チーズに抗生物質のナタマイシンが保存料として使われていることも知られていない。以前は、日本は食品への抗生物質使用を禁止していた。そのため、抗生物質を含有しているとしてナタマイシン使用のチーズは輸入が禁止されていた。それが外圧で使用が認められ、今や堂々とナタマイシン含有チーズが売られている。
関税撤廃された果実の輸入も急増している。昨年1~5月のブドウの輸入量は、TTP 11で関税撤廃されたため、前年同期比3割増の2万6728トンにも及ぶ。同様に昨年1~7月のリンゴの輸入量も関税削減され前年同期比33%増の4764トンで、過去10年で最高水準となっている。
懸念されるのが、残留濃度が高いポストハーベスト農薬である。これまで柑橘系に使われてきた防カビ剤の大量使用でカビに耐性ができ、新たな防カビ剤の使用が増えている。フルジオキソニルやピリメタニルなどの新防カビ剤は、輸入リンゴにも使用が認められている。
輸入小麦を原料としている食パンから、15年3月に国際がん研究機関(IARC)によって「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と結論づけられた発がん物質グリホサートが検出されたことは、消費者に衝撃を与えている。農民連食品分析センターが、流通している食パンおよび菓子パン15製品を検査し、そのうち食パン9製品、菓子パン2製品からグリホサートを検出(痕跡を含む)した。
さらに、日本政府は17年12月に海外農薬メーカーの求めに応じて、グリホサートの残留農薬基準の大幅緩和を実施した。これにより残留農薬基準は、以下の通り大幅に緩和された。
・小麦:5→30ppm
・ライ麦:0.2→30ppm
・トウモロコシ:1→5ppm
・そば:0.2→30ppm
・ごま種子:0.2→40ppm
今回のメガ輸入自由化で、グリホサート高濃度汚染小麦が、これまで以上に日本に輸入してくるのである。
このように、日本の食卓は発がん物質に汚染された農畜産物に占拠されようとしている。