マイナンバーカードを持っているのは、今のところ国民の16%ほど。政府はやっきとなってマイナンバーカードの普及推進を行っているが、筆者は所持している。
政府の施策に積極的に応じているわけだが、それが完全に裏切られた。有効期限が切れたことを知らせる通知書が来たので、それに添ってパソコンによるオンラインで更新しようとしたが、そこに書かれているのは真っ赤なウソ。オンラインによる更新はできないのだ。
筆者がマイナンバーカードを持ったのは、確定申告の電子申請のためである。住基カードの時から電子申請を行っている。過去のデータが利用できる。数字を入れていけば自動的に計算してくれる。生命保険料の控除の限度額など自動的に反映してくれる。電子申請はかなり便利だ。手で書いていた頃に比べると、所要時間は半分ほどと感じる。わざわざ税務署に持っていかなくていい。そうした時間や交通費も節約できる。
そうしたわけで、制度が始まって間もない時期に、マイナンバーカード取得の手続きをした。この時にすでに裏切られたような思いを味わった。マイナンバーカード発足当初は本人が市区町村の役所で受け取らなければならなかったが、2015年9月より、本人限定受け取り郵便で送られるようになった。だが地方での取材を終えて帰ってくると、保管期間がすぎたということで、郵便局から区役所に戻っていた。
区役所に連絡して、もう一度送ってくれるように頼んだが、それはできないと拒否された。クレジットカードなどはこういう場合、再送してくれる。こちらはいい仕事をするために、そして少しでも多く税金が払えるように、全国を飛び回って仕事しているのだ。郵便局での保存期間は、たったの10日間。その程度の期間在宅していないことはしょっちゅうある。再送してくれないのは、あまりにも不親切だ。
しかたなく区役所にマイナンバーカードを受け取りに行くと、住基カードを持っている場合は、返還してくれと言われた。必要な物を電話で確認した時には、そんなことは言っていなかった。住基カードの返還は後から郵送でも持参でもいいとのことだが、時間と費用がまたかかることになった。
いざ確定申告の電子申請をしようと、パソコンにカードリーダーを繋いで、マイナンバーカードを差し入れると認識しない。税務署に電話しても原因がわからず、さんざんたらい回しにされたあげくにわかったのは、住基カードで使っていたカードリーダーは、マイナンバーカードでは使えないということだった。新たなカードリーダーを買うために、また費用がかかった。
総務省と内閣府が押し付け合い
そして有効期限がやってきた。役所から送られてきた「マイナンバーカード・電子証明書有効期限通知書」という封書に同封されていた案内を見ると、スマートフォンやパソコンを使ってオンラインで更新できると書いてある。必要とされる顔の画像を用意し、指示に従って「マイナンバーカード総合サイト」を開いた。だがどこを探しても、「更新」の項目がない。
マイナンバー総合フリーダイヤルにかけ、ガイダンスに従って操作すると「更新」についての説明が自動音声で流れた。期限切れになる場合にいつから更新ができるかなど、ネットで見ればわかることの長々とした説明の後に、こう続いた。
「オンライン申請や郵送申請による更新手続きはできません。更新手続き可能な場所や手続きのご予約が必要かについては、お住まいの市区町村のホームページやお電話にてご確認いただきますようお願いいたします」
オンライン申請ができない? 聞き間違いではないかと思い、聞き直したが、確かにそう言っている。今時、銀行に口座を開くのも、クレジットカードを取得するのも、オンラインでできるというのに。そもそも区役所から郵送されてきた案内には、オンラインによる更新ができると書いてあるのだ。
総務省に電話すると、こう言われた。
「オンラインの申請ができないということですと、制度の設計になるかと思いますので、内閣府にお問い合わせください」
伝えられた内閣府の番号に電話をすると、こちらの説明を遮って、こう言われた。
「マイナンバーについてはコールセンターにおかけください」
コールセンターにかけたが、自動音声でオンライン申請ができないことがわかったのだと伝えると、「総務省にお電話してください」とのことである。
総務省から内閣府に電話してくれと言われたのだと伝えると、「個人の方は受け付けておりませんので、コールセンターにお電話ください」。オンライン申請ができるという案内に書かれていることと実際は違っているという制度上の問題を聞きたいのだと質しても、「コールセンターにお電話ください」とくり返すばかりである。
マイナンバーカードの更新がオンラインでできるというウソが書かれた案内が、税金を使って送られてきたわけだが、総務省も内閣府もまったく説明ができないのだ。マイナンバー制度に協力しようという国民にまで、なぜ政府はこのような仕打ちをするのか。政府の施策の隅々にまで、ウソノミクスが満ちている。
(文=深笛義也/ライター)