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木下隆之「クルマ激辛定食」

マツダ、創立100周年を機に“大衆車”から脱却か…全モデルに記念モデル設定、ブランドも一新

文=木下隆之/レーシングドライバー
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ホンダ「CX-3」

 マツダが創立100周年を迎えた。創業は1920年というから、まさに世界の自動車史にその名を刻んできたわけだ。

 それを記念したプロモーションが、好意的歓迎のなかで受け止められている。それは、マツダの翻弄された歩みへの慰労であり、賛辞でもある。マツダが経営的浮沈を繰り返しつつ生きながらえてきたことも、広島の郷土意識の強いメーカーであることも、どこか無骨で、それでいて世界で唯一のローターリーエンジン技術を備えていることなど、マツダに宿る数々の魅力が受け入れられているからなのだ。

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 まして感動的なのは、この100年に一度といわれる重度の世界恐慌と、100年に一度のアニバーサリーが重なってしまった悲劇と祝福が、いっそうマツダへの同情的な祝意に向かわせていると思う。つまり、マツダは愛されているのだ。

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 それにしても、今年のマツダは激動の時間を過ごしたと思う。数年前から、マツダはブランド力構築のため、社運をかけたプロジェクトを進めている。クルマのデザインコンセプトを一新。ゴテゴテとした意匠を捨て、「マイナスの美学」を追求した。それをすべてのモデルの統一コンセプトとして徹底。そればかりか、全国の販売店のたたずまいをリニューアルした。大衆車然としたマツダブランドを、孤高のブランドに成長させるためである。

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ロードスターRS

 それまでのマツダは、「低価格なモデル」といった印象が否めないできた。販売店への販売奨励金を上積みし、下取りを優遇して販売ノルマを無理やりに達成することも辞さなかった。それによってブランド力が下がった。あれほど高度な技術があるのに、低価格モデルという印象が強く残った。それを払拭するための施策が、この十数年のリブランディングなのである。そのひとつの区切りが今年の「100周年記念プロジェクト」だった。だが、本当ならば華やかに行われるはずのイベントの数々が、新型コロナウイルスの荒波を受けて頓挫しかけたのは悲劇である。

 このプロジェクトの凄みは、マツダが抱える全モデルに共通した記念モデルを設定したことだ。新しいブランドエンブレムを製作した。前身である東洋工業のマークと現在のマツダエンブレムを重ね合わせて、シンボルをデザインしたのである。

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100周年記念モデル

 さらに、それはプロダクトにも及んだ。マツダ初の乗用車である「R360」のイメージを受け継ぎ、現在のすべてのモデルのヘリテージを注ぎ込んでいるのが特徴だ。確かにマツダは、トヨタ自動車や日産自動車といったフルラインナップメーカーではない。グローバル販売は約150万台に満たない、比較的コンパクトなメーカーである。とはいうものの、全モデルを横断的に整えることには並々ならぬ情熱と苦労があったと推察する。それでも、それをやり遂げた心意気に世間は感動した。

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 すべての100周年記念モデルには、R360から受け継いだ「白いボディ」と「赤い内装」が再現されている。ホイールキャップには100周年記念エンブレムが組み込まれ、シートは深みのある赤で統一されている。100周年を声高に祝福する雰囲気に満ち溢れているのだ。

 おそらく、数年前から企画していたであろうこのプロジェクトは、世界的パンデミックという分厚い壁に遮られる寸前のところまでいったに違いない。だが、晴れてプロジェクトは始動した。それを筆者も素直に祝いたいと思う。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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