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片田珠美「精神科女医のたわごと」

娘を衰弱死させた梯沙希容疑者、“親→自分→我が子”の虐待の連鎖…無意識の加害者たち

文=片田珠美/精神科医
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「Getty Images」より

 東京都大田区のマンションに3歳の娘を8日間放置して鹿児島まで交際相手の男性に会いに行き、娘を衰弱死させたとして保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕された梯沙希容疑者は、彼女自身が17年前に母親から虐待を受けていたという。

 梯容疑者は8歳のとき、「自分の言いつけを守らない」と激高した母親から頭や顔を何度も殴られ、身体を布のひもやビニールテープで縛られた。児童相談所から相談を受けた警察が自宅を調べたところ、あばらが浮いた衰弱した状態で見つかっており、食事を十分与えられていなかったことがうかがえる。そのため、2003年9月、母親は傷害罪で逮捕・起訴され、母親の再婚相手の養父も保護責任者遺棄の疑いで逮捕されている(「週刊文春」7月23日号/文藝春秋)。

 この事件を契機に梯容疑者は宮崎県内の児童養護施設に入り、高校卒業まで過ごして、卒業後に上京したようだが、これだけ壮絶な虐待の被害者であれば、「あんな親にはなりたくない」と思うのではないか。

 だが、子どもの頃はそう思っていた虐待の被害者でも、自分が親になると、自分が受けたのと同様の虐待をわが子に加えることはまれではない。私の外来に通院している患者のなかにも、子どもへの虐待が発覚して、子どもを児童養護施設に預けている方がいるが、話を聞くと幼い頃親から虐待を受けていたそうだ。実際に子どもを虐待しないまでも、虐待の被害者のなかには、「自分もわが子を虐待してしまうのではないか」という不安にさいなまれている方が少なくない。

 実際、虐待の連鎖はしばしば起こる。「自分がされて嫌だったのなら、同じことを子どもにしなければいいのに」と私は思うが、残念ながら、そういう理屈は通用しないようだ。

「攻撃者との同一視」

 このように虐待が連鎖するのは、「攻撃者との同一視」による。これは、自分の胸中に不安や恐怖、怒りや無力感などをかき立てた人物の攻撃を模倣して、屈辱的な体験を乗り越えようとする防衛メカニズムであり、ジークムント・フロイトの娘、アンナ・フロイトが見出した。

 このメカニズムは、さまざまな場面で働く。たとえば、学校の運動部で「鍛えるため」という名目で先輩からいじめに近いしごきを受けた人が、自分が先輩の立場になったとたん、今度は後輩に同じことを繰り返す。同様のことは職場でも起こりうる。お局様から陰湿な嫌がらせを受けた女性社員が、今度は女性の新入社員に同様の嫌がらせをする。 

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