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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

菅義偉“親中国”政権誕生に中国政府が期待…超親中派・二階氏の仲介で中国寄り政策へ

文=相馬勝/ジャーナリスト
菅義偉親中国政権誕生に中国政府が期待…超親中派・二階氏の仲介で中国寄り政策への画像1
首相官邸のHPより

 安倍晋三首相が8月28日、突然辞意を表明したのもつかの間、永田町では次期自民党総裁イコール次期首相選びに焦点が移っている。もはや、安倍首相は過去の人といった印象だ。

 中国でも日本の次期首相選びに並々ならぬ関心を示している。なぜならば、トランプ大統領率いるアメリカのホワイトハウスと中国の関係が悪化しているなか、次期大統領に民主党のバイデン氏が選ばれても、米国の対中警戒感は強まりこそすれ、弱まることはないとの見方が一般的だからだ。つまり、トランプ氏が再選した場合でも、あるいはバイデン氏が新しい大統領に選ばれても、今の米国は超党派的に中国を敵視する雰囲気は変わらないとの見通しが強いのだ。

 このようななかで、中国としては米国と同盟関係である日本を中国側に引き込んで、日本を緩衝材として使って、米政権に中国の重要性を説得してもらうという日本の役割を期待しているのは間違いない。米中関係が悪化すればするほど、中国にとって隣国・日本の役割はますます重要になるのだ。日本にとって、中国は隣国であるだけに、多くの企業が中国に進出するなど経済的なつながりも強いのと同時に、安全保障の観点からも、中国と敵対関係になるのは極めて危険な選択だからだ。

 中国共産党機関紙「人民日報」傘下の国際問題紙「環球時報」(電子版)は、安倍首相が辞任表明した翌日の8月29日早朝、「安倍執政を回想する 中日関係の複雑さを体験」と題する社説を発表。その冒頭で「多くの中国人は安倍が嫌いだ。最大の原因は2013年に靖国神社を参拝したからであり、日本の平和憲法第九条を改正する動きを進めていたからである」と安倍氏の右寄りの姿勢を厳しく批判した。

 そのうえで、同紙は「日米同盟の存続するなかで、日本が米中双方と戦略的バランスを保つことは日本の利益に合致し、それが日本にとって唯一の道となる」と断定し、中国が日本の新政権の対中外交をそのように仕向けることが、今後の習近平指導部がとる外交政策であることを示唆しているのである。

中国、石破氏の言動も注視か

 それでは、そのような中国の意向を体現することができる中国側の意中の首相候補は誰かと考えると、菅義偉官房長官が浮かび上がる。なぜならば、菅氏の後見人として、菅氏を最も熱心に支持している派閥の領袖といえば、「超」がつくほどの親中派として知られる二階俊博幹事長だからだ。

 二階氏は地元の和歌山県田辺市に江沢民元中国国家主席の自筆の書「登高望遠睦隣友好」という記念碑などを建設しようとしたほどである。結局、地元の反対が大きく、計画は頓挫したが、和歌山の動物園に多数のパンダを送りこんでもらうように頼むなど、その親中ぶりはよく知られている。また、大型訪中団を率いて北京に乗り込み、中国最高指導部メンバーと会談するなど、中国指導部とは蜜月状態だ。

 それだけに、中国側としては、二階氏の意向を無視できない菅氏が新首相に決まれば、前述の環球時報の社説のように、二階氏を仲介役として、菅政権を中国寄りに動かしていこうとしたいところだろう。

 一方、菅氏以外に中国側が好意的に見ているのは誰かといえば、意外と思われるかもしれないが石破茂氏だ。石破氏は防衛オタクであり、中国の軍事力増強に極めて批判的であり、前出の環球時報の社説も「日本の主流右翼の一人であり、石破氏には不確実性がある」との専門家の見方を紹介している。

 しかし、石破氏は今年7月9日の派閥会合で、党外交部会などが習主席の国賓来日の中止を日本政府に求めたことについて「中国との関係にどういう影響を与えるかよく考えるべきだ」と苦言を呈したうえで、「礼儀は礼儀としてきちんと尽くさないといけない。その上で言うべきことは言うことが必要だ」とも指摘するなど、習氏の国賓来日を支持する立場を明らかにしている。

 これについて、日中外交筋は「中国側は石破氏の発言に注目しており、今後の石破氏の対中外交姿勢を注視している」と指摘するなど、中国側の石破氏を見る目が変わってきていることを明らかにしている。

 今月17日には新首相が選出されるとの見通しが強まるなか、中国側は駐日本中国大使館などを通じて、最有力候補となっている菅氏に関する情報を収集し、今後の対日外交方針を決めていくことになろう。

(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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