日本も例外ではありません。日本にはオリーブオイルの品質に関する法的規制がないため、スーパーマーケットなどで売られるEXVオリーブオイルの8~9割は化学処理された安いオイルをブレンドした偽物といわれています。
日本人は偽物のEXVオリーブオイルが大好き
日本で偽物が横行するのは、法的規制がないことだけが理由ではありません。それは、日本人の舌では本物のEXVオリーブオイルをおいしいと感じないのです。
去年1月に放送された生活情報番組『所さんの目がテン!』(日本テレビ系)で面白い実験が行われました。日本人とイタリア人各10人に、次の3種のオリーブオイルを名前を伏せて試食させ、一番おいしいと思うものを選ばせたのです。
A:普及品エクストラヴァージン(約700円)
B:ピュアオリーブオイル(約450円)
C:高級品エクストラヴァージン(約4400円)
その結果、10人の日本人のうち、Aを選んだのが6人、Bが4人でした。一方、イタリア人は全員がCを選びました。日本人はひとりもCの最高級EXVオリーブオイルを選ばなかったのです。
本物のEXVオリーブオイルには抗酸化物質のポリフェノールなどが含まれており、これが苦味や辛味といった本物独特の味と風味を醸し出します。この有効成分の味のクセが日本人には合わなかったのです。日本人にとっておいしいオリーブオイルとは、化学処理して有効成分がないもので、“食べてはいけない偽物”だったのです。
そもそも、EXVオリーブオイルに「普及品」「ピュア」などと冠がつくのもおかしな話ですが、日本人の好きな偽物は、品質の違いだけでなく値段も格安です。実験に使われたオイルの価格差でもわかる通り、本物はとても高価で気軽に買えるものではありません。街のイタリアンやスパニッシュの店でふんだんに使われているEXVオリーブオイルも、ほとんどが偽物です。高価な本物を使っていたら店は潰れてしまいます。
オリーブオイルに関する結論としては、以下のとおりです。
・EXVオリーブオイルには、一般にいわれているほどの健康効果はない。
・日本人がおいしいと思うのは偽物EXVオリーブオイルで、食べてはいけない。
・本物のEXVオリーブオイルを楽しむには、本物と偽物を見分ける知識と味覚を持ち、かつ高価な味を楽しめる経済的な余裕が必要。
健康に良いと思いながら使っているオリーブオイルは、かえって体に害をもたらす可能性すらあるのです。
(文=林裕之/植物油研究家、林葉子/知食料理研究家)