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劣等感やストレスで死亡リスクが1.5倍に
そして、より深刻なのは、この健康格差が、それなりの収入を得ている人にとっても他人事ではない点だ。
「仮に平均以上の暮らしをしていても、たとえば同級生とくらべて『周囲が持っているものを自分は持っていない』と感じれば、劣等感やねたみ、あきらめなどのマイナスの感情が生じます。これを『相対的はく奪感』と呼びます。この相対的はく奪感を持ちやすい状況にある男性は、そうでない人にくらべて循環器疾患(心疾患、脳血管疾患など)による死亡リスクが1.5倍も高いのです」(同)
人間は、周囲とくらべて自分が劣っていると感じると精神的なダメージを受ける。格差が広がり、かつての中間層は低所得層にこぼれ落ち、同じ会社のなかに正社員と非正規雇用者が混在する現在、「相対的はく奪感」を持つ人は確実に増えているだろう。
「今の日本で格差の壁を越えるのは、非常に困難なことです。『一度でも非正規に落ちると巻き返せない』という危機感から、ストレスを感じ、ブラックな企業などにとどまり続けて心身を壊す人が正社員にも増えています」(同)
持たざる者がより不健康になる社会が、はたして健全といえるだろうか。しかも、病気になる人が増えれば労働力が減り、社会保障費に対する国民一人ひとりの負担も増える。
近藤氏は「健康格差の処方せんは、日本社会が直面している社会保障費の増加、少子化や人口減少、経済成長率の鈍化など、多くの問題の処方せんにもなる」という。逆に言えば、健康格差の問題を放置しておくと、日本をさらに衰退させる原因となるのだ。
(文=喜屋武良子/清談社)
『「健康格差社会」を生き抜く』 「所得の格差」が「いのちの格差」まで生む「健康格差社会」。高齢男性の低所得者は「うつが7倍」「死亡率が3倍高い」のはなぜ? それだけではない。「負け組」だけでなく、「勝ち組」さえも病んでゆく。だれもが不健康になっていくのが、「健康格差社会」のほんとうの恐さ! 米国に追随し、日本もそうなりはてるのか。処方箋はないのか。
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