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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」

安い立ち食いそばは人体に危険…殺鼠剤や防虫剤使用の中国産が蔓延の恐れ

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

輸入物や乾麺は要注意

 ロシアのそば粥「カーシャ」は有名ですが、イタリアでも「ポレンタ」という一種のおかゆのような料理に使い、中国の北の地域では「猫の耳」と呼ばれる料理があります。インド北部やブータン、ネパール、カシミールなどの国々では「ロティ」という、日本のお好み焼きのような料理があり、ナンやチャパティにそば粉を混ぜたりもするようです。また、最近はフランス・ブルターニュ地方の伝統料理「ガレット(そば粉のクレープ)」が日本でもポピュラーになってきました。

 こうしてみてみると、そばを麺にして茹でて食べるのは日本と朝鮮半島、そしてブータンくらいのようです。それは、茹でてしまうと、そばに含まれるコリンなどの水溶性の栄養素が湯の中に逃げてしまうからかもしれません。それを補うために日本では、そば湯を飲むようになったのでしょう。つまり、そば湯を飲むことで、そばが持つ栄養素をすべて摂り込もうとしたのだと考えられます。

 日本人は、栄養学が入ってくる前から、経験的にそば湯を飲んだほうがいいとわかっていたのでしょう。しかし、乾麺のそばを茹でた場合、そのそば湯は飲まないほうが賢明です。そこには大して栄養物質があるわけではなく、塩分濃度が高いことも考慮すべきだからです。

 このように、食材として本当に素晴らしいそばですが、最近はほとんど小麦粉でつくられ、申し訳程度に少しだけそば粉を混ぜた商品ばかりになってしまったのは、嘆かわしい限りです。さらに、その小麦粉もそば粉も、ほとんどが輸入となっており、日本の伝統も泣こうというものです。

 そば粉の輸入先の大半は中国(約80%といわれている)ですが、ご存じのとおり中国産の食材はあまり褒められたものではありません。そば粉も同じで、農薬や化学肥料の害もさることながら、保管の段階で使われる殺鼠剤や、輸入する段階で使われる防虫剤に警鐘を鳴らす専門家もいます。

 チェーンの立ち食いそば店やあまりにも安いそば店は、使っている原材料に不安があるので筆者は絶対に食べません。詳しくは拙著『行ってはいけない外食』(三笠書房)をご参照ください。

 そばに需要があるからこそ、日本では多くのそば店が営業できているわけで、それだけ日本人がそば好きだということの証左でもあるのですが、ここでもまた食の安全性が問われるわけです。

 素晴らしい日本の食文化のひとつであるそばを守るためにも、そばを栽培している日本の農家を応援してあげてください。落語の「そば清」の主人公ほどではないにせよ、かなりのそば好きを自認する筆者としては、「そばくれぇはなんの心配もしねぇで食えるようにしてくれねぇかい」と、啖呵のひとつも切りたくもなるのです。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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