何はともあれ、筆者たちは3人分の席を確保。親切な男性のおかげで“ディスコ=怖い場所”という筆者の先入観は和らいでいったが、まだダンスフロアに飛び込む勇気は出ない。「全員参加でいきましょう!」というDJの呼びかけも無視し、先輩たちと、しばし様子見を決め込む。
マハラジャ祇園では曜日ごとにDJの選曲テーマが異なり、水曜は「80’s NIGHT」、木曜は「HOT DISCO NIGHT」、金曜は「ALL NIGHT DANCE」、土曜は「WEEKEND FESTIVAL」となっている。知らない曲ばかりだと楽しめないのではないかと危惧していたが、筆者たちが訪れた土曜は“新旧All Mix!! 土曜だけのエンターテインメントパーティー”と謳われており、「名前は思い出せないが聞き覚えはある」という楽曲が数多く流れていた。
筆者が確認できたタイトルを挙げるとマイケル・ジャクソンの「スリラー」、デッド・オア・アライヴの「サムシング・イン・マイ・ハウス」、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「リラックス」、アバの「ダンシング・クイーン」などなど。
ほかにもブルーノ・マーズやジャスティン・ビーバーといった、近年の洋楽も混ざっている模様。これは後々スタッフに聞いた話なのだが、「昔のディスコでは当時の最先端の音楽を流していたから、今のディスコでもそうしている」とのことで、なるほど納得である。
客の煽りとスタッフのアテンドで、筆者もついにダンスフロアへ…
席に座って観察していると、ダンスフロアは人の入れ替わりが激しい。なんだか人が増えてきたなと思えば、いつの間にか盛り上がりのピークを迎えており、気づくと落ち着いている。その繰り返しのようだ。
アッパーなチューンが連続し、「また店内のテンションが上がってきたぞ」と肌で感じていたのも束の間、目の前のお立ち台で踊っていた女性客が、挑発的な表情を浮かべながら筆者たちを手招きしているではないか。それに呼応するかのように、アフロのウィッグを被った男性スタッフが筆者の肩を掴む。
かくして筆者たちはフロアへと誘われ、周りの客の見よう見まねでダンスに興じることとなった。三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」が流れると、DJが「1本指!」と煽ってきたので、筆者もそれっぽく腕を上げてランニングマンのポーズを取る。これが筆者にとって、人生初のランニングマンだったことは言うまでもない。
その後も、筆者が小学生時代に踊ったことのある「ジンギスカン」や、どう控えめに形容しても“チャラい”ナンバーであるスパンカーズの「セックス・オン・ザ・ビーチ」など、いくつもの人気曲がフロアを沸かせていた。お立ち台はどこからか現れた外国人女性たちが占拠しているし、深夜を回って誰もがナチュラルハイになっているのか、性別も年齢も国籍も関係なく、笑顔で飛び跳ねながらハイタッチを交わす。
筆者が席に戻って休憩している間も、先輩2人組はダンスを続行。80年代のものと思われる洋楽が流れるなか、なんと40代くらいの女性客に振り付けを教わっていた。
東京でクラブに行った経験のある先輩Sもディスコに来るのは初めてだったらしく、「クラブで流れるような楽曲には下品に騒ぐものやカッコつけたものが多く、振り付けのある曲は少なかった。そこがディスコとクラブのノリの違いだろう」と冷静に分析。
そう聞くとクラブにも行ってみたいような、行ってみたくないような……と考えてしまうが、少なくともここマハラジャ祇園は、筆者のような初心者にもやさしいディスコだと言えそうだ。フレンドリーな客が多く、スタッフも客同士の輪をつなげようと率先して動いてくれている。
土曜はもっと早い時間に来れば忍者ショーや花魁ショーも楽しめたそうなので、そのために再訪してみてもいいかもしれない。
(文=A4studio)