風邪にはビタミンCが効くと、なんとなく思っている人は多いのではないでしょうか?親から聞いたり、雑誌やインターネットで情報を見たりして、そのように思っている人が多いようです。そこで薬剤師である私は、ビタミンCドリンクを売りまくっていました。「トップセールスの小谷」は、みなさんがなんとなく思っている情報を利用してつくられていたものだったのです。それはもう過去の話です。今回は、風邪の治癒にビタミンCが効くのかを検証してみたいと思います。
さらば風邪薬!―ビタミンCで風邪を追放
「風邪にはビタミンC」という説をさかのぼると、ライナス・ポーリング博士の1971年の論文にたどり着きます。同年にはポーリング博士の著書『さらば風邪薬!―ビタミンCで風邪を追放』(講談社)が出版され、これにより一般の人々に知れ渡るようになりました。同年生まれの方は今年47歳で、その親世代は70歳代でしょうか。時代からして、親から聞いたというのは納得できるでしょう。
そして時代は進み、2007年に『コクラン・レビュー』というものが出ました。レビューというのは、さまざまな論文を検証してまとめたものです。これによると、ビタミンCを1日200mg取っていた人と、そうではない人で、風邪にかかるリスクは変わりませんでした。しかし、過酷な環境にある人(マラソンランナー、スキーヤー、兵士)が1日250~1000mg量のビタミンCを予防的にとると、取っていない人と比べて風邪の発症率が50%下がりました。つまり一般の人々では、ビタミンCを毎日予防的に取ったからといって風邪の予防はできないのです。
しかし、続きがあります。風邪をひいている期間についても検証されました。予防的にビタミンCを取っていると、風邪罹患期間が大人で8%、小児で14%短縮されました。しかし、風邪をひいてからビタミンCを取っても罹患期間は短縮されず、症状が軽くなるということもありませんでした。
風邪の期間を短くすることは、とても重要なことです。お子さんをお持ちの方なら、風邪の期間を短くすることで、看病のために仕事を休む日を減らすことができます。