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南清貴「すぐにできる、正しい食、間違った食」 №83

料理の手間を劇的に減らす「家での料理のシステム化」

文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事

果物を食べなくなった日本人

 植物栄養素は、野菜だけではなく果物にも多く含まれています。しかし、ほかの国々に比べて日本は、果物の消費量が少ないことがわかっています。その理由は、さまざまあるでしょうが、もっとも影響を与えているのが、果物に含まれている果糖が中性脂肪を増やす(つまり太る)、というデマだと思われます。

 世界中の疫学調査でも、そのようなデータは出ておらず、むしろ健康効果のほうが認められているのですが、日本ではいまだに、このデマがまことしやかにささやかれ、信じ込んでいる人が多いために、果物の消費量が少なくなっているのでしょう。もちろん、言うまでもありませんが、果物に限らず、なんでも食べすぎれば太ります。筆者が言っているのは、あくまでも「適量」を食べるということです。適量とは、果物の場合、「2サーヴィング」、つまり両手のひらに載るくらいです。それが一日に食べる果物の適量と考えられています。

 昔の日本人は、よく果物を食べていました。季節ごとにおいしい果物が実るのは、本当にありがたい自然の恵みです。ただし、果物はほかの食べ物と消化の速度が違うので、一緒に食べないことが望ましいです。また、果物はアルカリ性の食品なので、胃酸を中和する働きがあります。胃酸は、その強い酸で食べものを消化するとともに、食べものに付着している雑菌を死滅させて私たちの体を守ってもいます。果物とほかの食べ物を一緒に食べると、その働きが抑えられてしまう恐れがあります。夏場は特に、菌類の働きも活発になるので注意が必要です。

 筆者は、果物は朝に食べることを勧めています。それは、午前中が排泄の時間だからです。果物に含まれている植物栄養素をはじめとする成分が、排泄を促す役割を果たしてくれます。昔から「朝の果物は金、昼の果物は銀」と言われているがごとく、朝食べることができなかった場合は夕方に食べるのがいいでしょう。いずれにしても、果物は空腹時に、単独で食べるのが基本と思っていてください。

 もうひとつ重要なのは、大切な植物栄養素を無駄遣いしないために、過酸化脂質を含んだものを食べないようにするということです。ポテトフライやポテトチップスをはじめとした揚げ物には、多量の過酸化脂質が含まれており、インスタントラーメンやカップ麺、またファストフードなども、ある種の揚げ物といっていいでしょう。私たちの体内でも過酸化脂質は必然的に生じてしまいますが、食べものでさらに上乗せすることは、ダメージを何倍にもしてしまいます。

 食事に関して、よく「バランスの良い食事を心がけましょう」といわれます。料理研究家や管理栄養士のなかにも、そのようなことを言う人がいます。しかし、その「バランス」とは一体、なんのことでしょうか。ごはんとおかずのバランスか、肉と野菜のバランスか、それがどのくらいの割合なのかなど、さっぱりわかりません。

 筆者は、そのバランスを「オプティマルフードピラミッド」というかたちで明確に表しています。それに則って、食事というものを考えていただきたいと思います。

 夏も終わりに差し掛かると、それまではなんともなかったのに、急にだるさを感じる、朝スッキリ起きられない、昼間眠気を感じてやる気が出ない、といった症状が出ることもあるでしょう。そんなときは、植物の力を借りましょう。植物たちは、私たちに力を貸すことを惜しみません。植物たちがつくり出した栄養素は、自然からの贈り物です。この時季こそ、その恩恵に浴したいものです。
(文=南清貴/フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事)

南清貴

南清貴

フードプロデューサー、一般社団法人日本オーガニックレストラン協会
代表理事。舞台演出の勉強の一環として整体を学んだことをきっかけに、体と食の関係の重要さに気づき、栄養学を徹底的に学ぶ。1995年、渋谷区代々木上原にオーガニックレストランの草分け「キヨズキッチン」を開業。2005年より「ナチュラルエイジング」というキーワードを打ち立て、全国のレストラン、カフェ、デリカテッセンなどの業態開発、企業内社員食堂や、クリニック、ホテル、スパなどのフードメニュー開発、講演活動などに力を注ぐ。最新の栄養学を料理の中心に据え、自然食やマクロビオティックとは一線を画した新しいタイプの創作料理を考案・提供し、業界やマスコミからも注目を浴びる。親しみある人柄に、著名人やモデル、医師、経営者などのファンも多い。

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