気が付くと、C氏は寝てしまっている。
「私も泥酔寸前だったが、D子と2人で昔話をしているうちに、頭に“アレ”が降ってきて、急激に酔いが冷めていったんだ」(同)
「アレ」とは、「覚せい剤を使った性行為の記憶」だという。
「シャブを打つと、すぐに体に電気が走る。もう、そこからはエロいことしか考えられない。もちろん、D子もそう。カウンターで思い出話をしているうちに『ところでAちゃん、まだやっとんの?』と……。『来たな』と思った私は、『やめた』と言えなかった。だって、目の前の昔の女がパケ(小袋)ちらつかせてきたんだから……」(同)
「フィニッシュは牛乳瓶1本分ぐらい」
閉店時間が迫り、A氏はC氏をタクシーに乗せると、D子とともにホテルに入っていった。
「それから毎週、D子とホテルでシャブをやった。こうなると、もうダメだ。8時間や9時間は当たり前で、コンディションがいいと2日ぐらい“終わらない”んだからな。もちろん、仕事も行かないようになり、D子のアパートに転がり込んで、まさにヒモ。1カ月後、2人とも逮捕されたわ」(同)
覚せい剤を使用した性行為について、A氏は「アホらしくてノーマルなことはできないようになる」と語る。あまりに生々しいため詳しい描写は避けるが、「フィニッシュは牛乳瓶1本分ぐらい」というから、心身ともにタガが外れてしまうようだ。
3度目の逮捕で4年の刑期を終えたA氏は今、昔と同じく肉体労働に励んでいる。
「もうわかった。油断したらおしまいだと。ただ、フラッシュバックがひどくてね。昔はこんなに何度も襲われなかったんだけど、今は酒を飲まないのに気が付けば“アレ”がやってきて、女が私に微笑みかけるんだ……」(同)
「そうなったときはどうするのか」という問いに、A氏はこう答えた。
「寝られなくなるので、エロサイトでひとりさびしく右手を使ってる。そこでフラッシュバックと戦うとおかしくなるから、その後に映画を見て寝てるんだが、またいつ襲われてもおかしくない。ただ、女とリアルに会うことだけはしない。目の前に裸体がきたら、それこそスパークするからな」(同)
一度手を出すと、「完全には」やめられないのが覚せい剤の怖さのひとつである。
(文=稲垣翼/ライター)