近年、企業で働く人の3人に1人が、過去3年間にパワハラを経験しているといいます。国もその対策や解決を声高に求め、対策を立てる企業も増えてきています。しかしながら、実際に社員から相談があっても、解決すべきパワハラ問題を逆にこじらせてしまうケースが少なくありません。今回は、職場でありがちなパワハラ問題がこじれる典型的理由3つについて、そして、そうならないための対処案について、お話ししたいと思います。
感情と事実に分けて対応できていない
まず、パワハラ問題がこじれる1つめの理由は、パワハラ問題に潜む感情と事実の2つの要素を考慮して対処していないからです。
パワハラ問題への対処には、「感情の救済」と「事実の認定(クロなら処罰も)」という2つの異なる要素があります。この2つの要素があることと、その要素の優先順位が、ハラスメントに関わる立場によって異なることが、多くのハラスメント問題をこじらせているようです。
まず、パワハラを受けた相談者は、救われたいという感情と、パワハラを自分が受けたという事実を認めてほしい、そしてできれば相手を処罰してほしいという希望があります。
一方、パワハラをしたとされる相手には多くの場合、そのようなクレームがされたことに対する怒りや失望、落ち込みといった反発の感情が生じます。そして、そのクレーム内容が事実とは認定されたくないという事実への否定や、もしくは自分はパワハラをしていないと考えるに至りますが、後者のほうが多いです。ハラスメントとは「加害者の意図に関係なく行われたこと」と定義されていますから、このような反応は当然なものとも言えます。
そして、会社側の立場としては、まず相談者の感情を助けたいと考えます。が、それは必ずしもパワハラの事実を認定し、加害者を処罰するということではないのです。会社にとってパワハラ事実の有無判定は、あくまで一連の定められているプロセスです。そこに相談者(被害者)と相手(加害者)の感情の割り込む余地はなく、単に事実の有無を判定するだけです。
このように、パワハラに関わる3者の求める内容や優先順位が異なることを認識せず、「訴え→調査→判定と処罰」を行っている限り、多くのわだかまりが生じることは容易に想像がつきます。
対処案としては、パワハラの判定プロセスが定められているのと同じように、相談者の精神面のフォロー体制もしっかりと構築し、感情の救済も並行して行えるようにすることがあげられます。