家事代行業界が抱える問題点、そして打開策
次に、需要の高まりの要因をどう分析しているのか聞いた。
「共働き世帯が増えてきて、家事に手が回らない方が増えているということ。さらに、今まで家事代行は高くて手が出せないというイメージがあったと思いますが、利用者とスタッフの自動マッチングシステムの構築といったIT化によってリーズナブルに利用できる事業者が増え、そのイメージを払拭できつつあることも要因だと考えています。
また、これは私見ですが、テレビドラマなどのマスメディアでの露出が増えたことも要因のひとつだと分析しています。例えば、一昨年大ヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)にも家事代行サービスが出ていましたし、メディアで取り上げられることが多くなったということも、背景としてあるのではないでしょうか」(同)
広がりを見せつつも、家事代行サービスの利用経験者が3%程度と少ない現状と、それでも供給が追いついていない業界の今後について、本間氏の見解を聞いた。
「利用者側からすると、知らない人に自宅に入られるという抵抗感がある方が、やはりまだ多いようです。ですから、今後、プライバシーに配慮したサービス設計を各事業者が打ち出していく必要があるでしょう。
ひとつの事例として、『First』という家事代行サービスは、スタッフが持参したスマホを使って作業中の様子を撮影し、利用者は遠隔地にいても自分のスマホからリアルタイムでその様子をチェックできるというシステムを採用しています。このようなサービスを通じて、少しでも家に入られる抵抗感を減らしていかなければならないと思います。
また、利用者のヒアリングをしていて感じるのは、主婦の方などが家事代行を依頼していると、ご近所から『家事をサボッているのでは?』と思われそうで抵抗があるという方も少なくありませんでした。ただ、政府が“女性が活躍する社会”を進めていることを我々業界が追い風として、『家事は他の人に任せてもいいんだ』という空気感を醸成していくことがカギになっていくでしょう」(同)
とはいえ、各事業者が優秀なスタッフを確保できなければ、『DMM Okan』の二の舞になりかねないだろう。
「事業者側としての一番の問題点は、やはりスタッフの数の確保と質の担保であることは間違いありません。そしてそれは我々業界が、家事代行を行うスタッフとして働くことの魅力を、もっと周知していく必要があるということでもあります。主婦の方々が培ってきた家事スキルをダイレクトに活かせる仕事である、時間の融通がきく仕事である、『ありがとう』と感謝される喜びがある仕事である等、こういったメリットを業界として伝えていくことが重要だと思います。
一方、質の担保という側面では、事業者が自社でスタッフを雇用する形態であれば、高いクオリティーを保ちやすくなるでしょう。『DMM Okan』は自社でスタッフを雇用するかたちではなく、登録制で一般の方(家事代行スタッフ)が一般の方(利用者)にサービス提供するという形態だったため、スタッフ教育する体制が整っておらず、質の担保ができなかったのだと思います。ですから『DMM Okan』のサービス終了を教訓にしつつ、事業者が今後きちんとした研修体制を整えて質を担保していくことが課題になっていくでしょう」(同)
家事代行サービスが市場規模をさらに拡大させるためには、スタッフのさらなる増加と、スタッフの質をさらに高めていくことが必要ということのようだ。事業者たちが、現状の供給不足に対してどのように対処していくのか、そしてこの先、家事代行サービスがどのような広がりを見せていくのか、その推移と変化を見守っていきたい。
(文・取材=A4studio)