WHO、世界的な運動不足の深刻化に警鐘…がん等の病気リスク増大、歩行だけで大きな効果
スポーツの秋である。心身の病気の予防や改善のために、積極的になんでもよいので運動をやりたいものである。
WHO(世界保健機関、本部ジェネーブ)が9月5日、「世界の成人(18歳以上)の28%(約14億人)が運動不足であり、糖尿病、心臓病、がんなどの生活習慣病に罹る危険性が高い」という研究報告を英国の世界的な医学誌「Lancet」に掲載した。
これは168の国・地域の190万人を対象に、2016年時点での統計を解析したもの。世界全体で運動不足の人の割合は男性23%、女性32%であるが、欧米の高所得層では高く(米国40%、ドイツ42%)、その原因として自家用車の普及や肉体労働の不足(デスクワーク中心の仕事)が挙げられている。
日本での運動不足の人の割合は、36%(男性34%、女性37%)だったという。
「WHO」は運動不足解消のために、
(1)一週間で150分以上のウォーキングや軽いサイクリングなどの適度の運動
(2)一週間で75分以上のランニングやエアロビクスなどの激しい運動
を図るように推奨している。
年齢とともに筋力と筋肉量が低下する状態「sarcopenia」が注目されるようになってから、「筋肉(運動)が健康増進や病気予防にいかに大切か」についての研究が欧米の先進国でなされるようになった。「sarcopenia」に陥ると、歩行速度が遅くなり、転倒骨折のリスクが増加し、がん手術後の合併症(肺炎や貧血、食欲不振、歩行障害)のリスクも格段に高くなる、という。
人間の体重の約40%が筋肉で、その70%は腰から下に存在する。(体の)筋肉は実に約600種類も存在し、その中で最大のものが大臀筋(尻の筋肉)と大腿四頭筋(太もも)である。年齢とともに老化が進んでくると、尻の筋肉が削げ落ちて下がり、大腿(太もも)も細くなり、下半身が寂しくなってくる。このころから膝や足の痛みなどの整形外科的疾患のほか、高血圧、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病、がんなどの内科的疾患の罹患も増えてくる。
それはなぜか。以下の通り、筋肉の生理的効能を見れば、その解答はおのずと見えてくる。