月に1度は美容院に行き、流行の服を身にまとっていたはずの妻が、すっぴんにひっつめ髪、流行遅れのワンピース姿だったのだ。
「呆然とする僕に、妻が笑いかけて言うんですよ。『あたし、ひどいかっこうでしょ? でもね、このほうが調停員の同情を引くのよ』って」
浮気がばれて妻(無職)から離婚を言い出された高橋さん(仮名/36歳)の体験談を聞いてみよう。
「確かに浮気をしていた僕が悪かったんです。不倫相手とは3年以上続いていたし……。だから、慰謝料をかなり取られるだろうなあとは覚悟してました。とは言っても、こんな不況のご時世だし、僕の収入も右肩下がり。何百万円も取られるものじゃないだろうと思ってたのですが……」
いきなり弁護士登場で勝負あり
結婚生活5年、子供なし、年収400万円前後の高橋さん。けれども調停に挑んで、驚いた。なんと、妻が弁護士を伴っていたというのだ。
「だって弁護士を雇うのって、何十万〜何百万円とかかかるんでしょう? それを専業主婦の妻が雇えるなんて。もちろん妻の実家は資産家じゃありません。彼女の両親は、今じゃ年金生活のはずなんです」
妻側の弁護士が理路整然と法的な答弁を述べるのに対し、高橋さんの主張はしどろもどろ。調停員から妻の弁護士の主張する内容を聞かされても、どうにもうまく切り返せない。
高橋さん「収入が落ちているから、妻が望むほどの慰謝料は出せない」
調停員「奥さんが、これから職業訓練を受けて職を得るまでの生活を支えるくらいの慰謝料を出すべき」
高橋さん「僕自身の生活が、成り立つかどうかわからないご時世だから」
調停員「別居中でも婚姻が継続しているうちは扶養義務があるので、別居期間の奥さんの生活費も払う義務があります」
結局、妻の言い値に近い、多額の慰謝料を取られてしまった。
「分割にしてもらったとはいえ、払えるかどうかわからないような額の慰謝料になってしまって……」
誰でも弁護士が雇える?
弁護士を雇えるような金があるなら、そんなにむしり取らなくてもいいじゃないか。
いや、むしろ財産分与の対象になるだろう、という高橋さんの主張に対して、調停員はこう言ったという。
「奥さんは専業主婦で収入がありません。離婚のごたごたで体調も崩しているそうですし、ご両親も年金生活。だから『法律扶助制度』を利用して弁護士を雇ったんですよ」