裁判のように証人が呼ばれることもまずないし、相手と顔を合わせず、あまりお金もかけずに、話し合いが進められるのだから、なかなかありがたい制度といえよう。現在、離婚全体のうち、協議離婚が約90%、調停離婚が約9%、裁判離婚が約1%。つまり、離婚全体のうち1割弱が調停によるものなのだ。
離婚調停の効力は裁判並み
ただ、調停が開かれるのは1カ月半〜数カ月に1回程度。1回で決着することはほとんどないので、終了まで数カ月もの時間がかかることを覚悟しなければいけない。また、調停でついた話し合いは、裁判官立ち会いのもと調停調書という書類にされるのだが、調停調書は裁判の判決文と同じくらい強い効力を持つ。裁判に比べて手軽だと軽く考えてしまいがちだが、その効果は非常に強力なものなのだ。
しかし、この調停で大きな失敗をしてしまう男性たちも数多くいる。
山本さん(仮名/40歳)は、体験談をこう語る。
「離婚調停を仕切る調停員も人の子です。案外、感情ってのが入るんですよね。うまく同情をひいたほうが強いっていう単純なことに、僕は思い至らなかったんです」
山本さんは、大手ハウジングメーカー営業マンで、年収900万円近くの高収入。元妻はパート従業員。別居半年でも話し合いがつかず、妻のほうから調停を起こされた。
「調停があるのは、裁判所の開いている平日の昼。だから僕は、仕事を抜け出して行くわけです。仕事柄、安物のスーツだとお客さんにばかにされちゃうこともあるから、それなりのスーツを着ていて、そのままの格好で調停に行きますよね。そこで調停員に言われたんですよ。『奥さんは別居してからずいぶん生活に困ってる様子です。失礼ですが、あなたはずいぶん良いスーツを着ているようですし、慰謝料や養育費は、奥さんの希望額くらいは出せるのではないですか?』って説得してくるんですよ。ずっと年上の2人に言われ続けて、あれよあれよという間に高額の慰謝料と養育費が、決められてしまったんです」
山本さんの妻は別居後、実家からの援助もあるはずで、それほど経済的に困窮しているとは思えない。
妻の名演に調停員もコロリ
どうして調停員は妻が経済的に苦しんでいることを、これほどまでに強調するのか?
山本さんがその理由を知ったのは、調停が終了し、高額の慰謝料と養育費を払うことが決まった日のことだった。
裁判所の女子トイレから出てくる妻の姿を見て、山本さんは愕然とした。