南海電鉄が補助金を受給する流れはRIAがつくった?
RIAのもう一方の顔は、一連の設計関連業務を落札する前から務めていた南海電鉄のコンサルタントである。ちょうど、再開発協会の下請けで和歌山市の仕事をしている14年中に、南海電鉄とも契約を交わしていた。南海電鉄の担当者はこう話す。
「14年度に、再開発事業のサポート業務というかたちでRIAさんと契約しています。サポート業務とは、プロジェクトの調整支援です。われわれも再開発事業のノウハウとか事例に詳しくない部分がありますので、そういったところをサポートしていただいております。コンペはしておりません。社内の適切と思われるところで決めさせていただいています。契約の詳細については、お答えいたしかねます」(南海電鉄施設部)
南海電鉄は、総事業費123億円にも及ぶ再開発事業の計画について、公募もせずにRIAとコンサタント契約を交わしていたという。これにより、RIAは南海電鉄のコンサルタントとして、14年7月から関係者会議に出席して、南海電鉄が行う再開発事業をサポートしていたわけだ。
ここで問題になるのは、利益相反である。RIAは、同一事業について、同じ時期に、一方では下請けとはいえ、自治体からの依頼で公共施設の再配置を提案し、もう一方では巨額の補助金をもらう側の民間企業の依頼で「プロジェクトの調整支援」を行っていたことになる。
南海電鉄は「RIAさんとは単費で契約しております」と、RIAに依頼した業務は自社の私的費用で賄い、公的な補助金は一切使っていないことを強調する。
だが、和歌山市の業務を下請けとして担当した報酬の原資は税金である。それにもかかわらず、移転の必要のない図書館を駅前に持ってくることで、和歌山市や和歌山県の負担を増やしながら、南海電鉄が64億円という巨額の補助金を受給できるように企図したのではないだろうか。
和歌山市駅前の再開発業務にかける三者の関係を図にしてみた。12年から、ほとんど切れ目なく、RIAは和歌山市の再開発業務を手掛けていることが一目瞭然。唯一、競争入札が行われたのは、赤色で示した南海電鉄が施主となる駅前施設の設計関連業務のみ。それについても、2月17日付当サイト記事『ツタヤ図書館、建設で談合疑惑浮上…和歌山市、入札前から特定業者と資金計画について会議』で報じたように、資金計画が落札の2年前に発表されていたことから、談合疑惑が持ち上がっている。
つまり、事業の計画立案者が公的な審査を経て選定されることなく、ズルズルとその後の事業を直接担っているようにみえる。
94億円もの公金が投入される再開発事業のプロセスが、これほど不透明であっていいのだろうか。これは、一民間企業に対する利益供与に当たらないのか。これまで市議会では、再開発の不透明なプロセスについて詳しく取り上げられたことは一度もない。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)