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電通、何度も何人も社員が過労死しても変わらず…経営陣&社員の怖すぎる「鈍感力」

構成=吉田典史/ジャーナリスト
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–なぜ、会社員は今回のような事件に強い関心を払わないのだと思いますか。

馬渕 電通の社員に限らず、多くの会社員が過労死を他人事と考えているためだと思います。過労死や過労自殺の前の段階で起きる、いじめやパワハラ、セクハラにも、自分は巻き込まれるわけがないと思っているようです。過労死や過労自殺には前段階があるのですが、そのことに疎く、想像力があまりにも乏しいといわざるを得ません。

 本心でどう思っているかわかりませんが、多くの社員が表向きは冷静で素直な「いい子」を演じています。そのほうが楽だからです。

 ほとんどの人が、社内で自分がいる小さなエリアを守り、そこで認められ、人事評価が上がり、出世をすることを求めています。特に、男性社員にその傾向が強いと感じます。電通では、非人道的な仕事ぶりを求める「鬼十則」がありますが、それすらも受け入れ、家族のためにも活躍をしたい、出世をしたいというのが多くの社員の本音でしょう。

 こういう考え方をする人が多数を占めている限り、会社は何も変わりません。そして、社会がこのような生き方をする会社員を黙認しています。そのため、過労死事件に関心を示す社会人が増えないのです。

厳しい法規制が必要

–過労死・過労自殺を防ぐために、まず何をするべきだとお考えですか。

馬渕 残業時間を厳しく規制できていないことが、ひとつの問題です。たとえば、「月の残業は50時間まで」など、今より減らした上限を法律で定め、守れない会社には思いペナルティーを与えるべきです。労働基準監督署からの是正勧告程度では、過労死を防ぐことはできません。

 法律の上限を無視して、サービス残業として社員たちにそれ以上働かせるように仕向ける会社もあります。そこで、実労働の時間をきちんと残すように、法律で決めないといけません。すでに、実労働時間を隠そうとする会社は多数あります。そうすると労働基準監督署は実労働時間を把握できず、過労死があっても労災として認定されない可能性があります。過労死の遺族たちの多くは、この壁の前で無念の涙をのむのです。

 この問題を解決するために、それぞれの会社の労使間の話し合いに委ねようとするのは誤りです。報道によると、電通の企業内労組は経営側と労使協定を結び、月間の時間外労働時間を最長70時間としていました。しかし、亡くなった高橋さんは、月の残業が100時間を超えています。労働組合は、経営側に対して協定を守るように迫ることができないのではないかと思います。

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