――確かに、やくざをやめてもその後の生活は難しいですね。たとえば、「殺しの軍団」といわれた三代目山口組の直参・二代目柳川組の谷川康太郎親分の言葉として、「ガキの頃から不良で逮捕歴数回、学校はナラショー(奈良少年刑務所)や。手に技術はないし、土方やるほどの体力もない。保証人の資格にかなうような知りあいもない。国籍は韓国。あんたが仮に企業経営者としようか。そんなヤクネタ(厄介な存在)雇うてくれるか」というものが知られています。
竹垣 そんな人間ばっかりですからね。かつてはなんとか親分衆がまとめていましたが、今は社会がやくざの存在を認めないのですから、どうにもなりません。
しかし、これからは空前の人手不足時代がやってきます。建設業などの力仕事やクレーム対応などの用心棒的な仕事には、元やくざのニーズもあると思います。「親分」が、今度は「親方」となって現場を仕切ればいいんですよ。とはいえ、五仁會は小さな組織でカネもないのでできることは限られています。今後は公的な支援も求めていきたいと思っています。
一方で、元極道の私が「やくざをやめろ」とか「“暴力団”壊滅」と言っていることに対しては批判も聞こえてきますが、これは私の信念ですから曲げるわけにはいきません。
――「批判」といえば、2015年8月には竹垣さんの事務所兼ご自宅に銃弾が撃ち込まれています。
竹垣 あの夜は、私も自宅にいました。文句があれば、ガラス割り(カチコミ:かつては拳銃で事務所の玄関の代紋入りガラスを撃ったことから)なんかではなく、正々堂々と私のところに来ればいい。
ただ、私なんかのために懲役に行くのは、もったいないのではないでしょうか。今は重罰化が進んでいて、単なるガラス割りでもけっこう長い懲役に行かなければなりませんし、ヘタをすると殺人未遂になるかもしれません。仮に実行犯が組織の者であれば、トップにも責任が及ぶでしょう。
それに、昔は組に貢献した者にはそれなりの功労金が出たものですが、今はカネどころか出所する頃には組がなくなっている可能性もあります。昔の抗争事件で今もまだ長い懲役を務めている者はたくさんいますが、これからどうなるのか不安だと思いますよ。本当に、やくざの末路は哀れなんです。
トップであろうと枝(下部組織)の者であろうと、自分が殺されるか誰かを殺して長い懲役に行くか。あるいは、逮捕されなくてもカネがなくて生活保護を受ける者も少なくありません。「つまらない世界におったなぁ」と、私もやめてからわかりました。
『極道ぶっちゃけ話 「三つの山口組」と私』 元山口組系組長、現NPO法人代表が語る、テレビでは絶対に言えない「あの事件」の真相。 「これぞ本物の侠(オトコ)。わし以上の“突破者”の声を聞け!」(宮崎学)