「山口組は大きくなりすぎた」
――今、やくざは窮地に追い込まれているということですね。本書でも触れられていますが、2011年秋までに全都道府県で暴力団排除条例が整備され、やくざは正業につけなくなり、銀行口座などもつくれなくなりました。六代目山口組・司忍組長は「異様な時代が来た」と新聞の取材【※1】に答えています。
竹垣 六代目が言う「異様な時代」とは、「やくざがやくざとして生きられない」という意味でしょうね。この取材で、司六代目は「幡随院長兵衛【※2】のような生き方」を目指すとも話しています。私もまったくの同意見です。山口組三代目の田岡一雄親分も長兵衛を信奉していましたし、私も長兵衛のような「町の顔役」としてなら、やくざにも生き残る道があると思うんです。
そもそも、山口組は大きくなりすぎました。長兵衛のように地元だけを守っていればよかったのですが、田岡三代目の頃から全国進出を続けて、ここまできました。今は直参になるにもカネがいるし、もう大企業と同じですね。以前であれば、大規模組織にも大規模なりのメリットがあったのでしょうが、恐竜と同じで、大きくなりすぎたものは滅びるのだと思います。
――分裂は、やはり大組織の弊害ということでしょうか。
竹垣 そうですね。この分裂は起こるべくして起こったものだと思います。以前から、いろいろなかたちで不満はたまっていたのでしょう。特に、直参だった後藤忠政さんの除籍は大きなきっかけになりました。
――2008年のことですね。この年の10月に後藤組長が主催したゴルフコンペに多数の大物歌手が参加していたことが報道され、山口組でも問題となったようです。後藤組長を擁護する内容の怪文書が出回りました。後藤組長は“武闘派”として知られていますが、一時は日本航空(JAL)の個人筆頭株主になるなど“経済やくざ”のはしりでもありましたね。引退後に上梓した自叙伝『憚りながら』(宝島社、2010年)がベストセラーになるなど、以前から注目されています。
竹垣 二次団体ながら、地元の静岡県警には「後藤組壊滅対策本部」もありましたからね。報道で社会的に問題が大きくなったので、「定例会をさぼってコンペを開いた」として、山口組執行部が後藤さんを叱責したんです。
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