ビジネスジャーナル > 社会ニュース > 日銀総裁人事、本当に揉めたのか?  > 2ページ目
NEW

日銀総裁人事、そもそも「首相官邸と財務省の大バトル」など本当にあったのか?

文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授
【この記事のキーワード】, ,

 となると、安倍首相の最善の戦略としては、麻生氏に立候補の口実を与えないことになる。日銀人事リストをつくるのは財務省の仕事なので、政治課題にしないためには、黒田日銀体制の3人(総裁、副総裁)の留任がベストシナリオとなる。その人事は、これまでの日銀のパフォーマンス(成果)からも正当化できる。

 金融政策の目標は、物価の安定と雇用の確保である。この2つの目標について、インフレ率と失業率に逆相関(フィリップス関係)があることを理解した上で、失業率を低く抑えつつ、その条件下において最低限のインフレ率を達成することがベストである。日本の場合、インフレを生じさせない失業率の下限(NAIRU)は2.5%程度であり、それに対応する最低のインフレ率は2%程度。日銀はこれをインフレ目標値としている。

 インフレ率について、黒田体制スタート時の2013年4月はマイナス0.7%だったが、17年12月にはプラス1.0%までなった。目標は2%、つまり本来であれば2.7%ポイント改善すべきところが1.7%にとどまった。これは60点である。

 失業率については13年4月は4.1%だったが、17年12月には2.8%まで改善した。目標は2.5%まで、1.6%ポイント改善すべきだったが、1.3%ポイントだったので、これは80点である。インフレ率と失業率を総合的にみて70点といえる。これは、100点満点ではないが及第点である。

 現在の総裁、副総裁の留任がベストだが、個別の事情で退任であれば、財務省出身、日銀出身、学者出身という安定した現体制の3枠を維持した上で、微修正することとなったのだろう。つまり、中曽宏副総裁の後任としては同じく日銀出身の雨宮氏、岩田氏の後任としてこれもリフレ派学者の若田部氏というわけだ。

 このシナリオからは、マスコミ報道によれば日銀が「あの人だけは困る」としていた本田悦朗氏は候補者として名前が挙がってこない。財務省が心配のあまり、本田氏を副総裁の候補者から外そうと思ってマスコミにリークした可能性があるのではないかと、筆者は邪推している。
(文=高橋洋一/政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授)

日銀総裁人事、そもそも「首相官邸と財務省の大バトル」など本当にあったのか?のページです。ビジネスジャーナルは、社会、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!