関空、南海地震なら崩落の危険も
東京都港湾局・建設局は今年3月、「想定し得る最大規模の高潮による浸水想定区域図」を発表した。これまでで最大規模の室戸台風(911.9ヘクトパスカル)を想定したものだ。これを見ると、その場合でも羽田空港は浸水しない。ただし、空港に隣接する大田区の東側が広範囲にわたって3~5メートル浸水すると想定されている。
その場合、交通の遮断が心配される。空港につながる高速道路は地下に潜って走って行き、京急電鉄やモノレールの空港駅は地下にある。だが、排水設備が整っているので、どちらも心配はないだろう。台風によって羽田空港が、関西国際空港のような機能停止に陥る可能性は少ない。
「国内に海上空港は羽田空港と関西国際空港、神戸空港、中部国際空港、北九州空港と5つあります。神戸と中部と北九州の滑走路の標高は、羽田に近い数値です。関西国際空港だけが特異な数値となっています。関西国際空港のⅠ期島が群を抜いて標高が低い。それは、やはり地盤が柔らかく沈下した影響だと思われます。われわれが東日本大震災時に東京湾岸の埋め立て地で経験した液状化による大きな被害を考えると、南海地震が起きた場合の関西空港の被害も小さくないと考えられます。これからの空港機能の保全対策については関西空港会社が最優先課題として準備するでしょうが、すべてを事前準備することは現実的ではありません。今年の台風被害の一つであった関空での航空貨物輸送機能の停止は医薬品や非常食など、震災時に特に重要となる緊急物資の被災地への輸送の重要拠点の喪失を意味します。これは震災時の重要な初動機能ですので、最悪の事態として関空被災を前提とした伊丹空港か神戸空港への貨物専用機を含む航空貨物便の緊急展開が可能となるように、航空貨物取扱に必要となる地上設備の事前配備が必要かもしれません 」
日本を代表する国際拠点空港のひとつである関西国際空港であるが、さまざまな危険性を抱えているのだ。
(文=深笛義也/ライター)