これだけの人口が減って、電車やバスを走らせ続け、または電気や水道を供給し続けることができるのだろうか、と不安になってきました。このままいくと日本人は、過疎地域はもちろん市町村や都市のほとんどを放棄して、社会インフラをギリギリ維持できる大都市へ強制的に移住しなければならない未来がやってくるかもしれません。
でも、少子化によってこれだけ人口が減るのであれば、当然、高齢者も減るわけで、いわゆる「高齢化社会」からは、脱却できるのではないか、とは思いませんか?
●高齢化は改善されるのか
ここで第二の疑問が出てきます。
[江端の疑問その2] 現在の少子化傾向を放置した場合、高齢化社会はどうなるか?
まず、高齢社会の定義を書いてみます。
次に、この定義に従い、私のシミュレーションプログラムで、今後の日本の高齢社会の推移を計算してみました(表3)。
日本は今、まさに「超高齢社会」の真っただ中にあります。今後40年の間、超高齢社会はさらに悪化して、超・超高齢社会になります。改善の要因は何も見当たりません。
そして、2053年(40年後)に、人類史上まだ経験のない「超・超・超高齢社会」が出現します。かくいう私(現在47歳)も、その「超・超・超高齢社会」の中、高齢者として生き、そして死んでいくことになります(もっと早く死ぬかもしれませんが)。
いま私はパソコンの前で、憂鬱を越えて、ひとり乾いた笑いを「は、は、は、は」と連発しています。
冒頭で述べたように、現在、私の両親は要介護認定を受けており、私は介護の現状を見ている最前線の人間です。この状況よりもっと悪くなる社会というものを、私はイメージすることができないのです。
40年後のさらにその後に、この傾向は改善されるかというと–まったくされない。
100年後から、日本人が(計算上)ひとりもいなくなる3222年まで計算したのですが、「33.6%」の「超・超・超高齢社会」からピクリとも動きません。私たちより若い世代の日本人は、「3人に1人が高齢者」という世界を生きなければなりません。誰も逃げることはできません。
但し、これは合計特殊出生率1.4を維持できた場合です。次回では、この”1.4”が、今後、どのようになっていくかについて説明します。
さて、今回は「少子化対策」を放置した場合に、どのように人口が推移するか、また高齢社会がどうなるかについての計算を行いました。
その結果、
・70年後に日本の人口は今の半分になる
・高齢社会は、あと40年間悪化を続け、その後もその状態は改善されない
という結果を得ました。
次回は、この国の「結婚」というのものが、どのような形に変わっていくかを数値で示します。
そもそも今回のコラムは面白半分で、独身者が既婚者人口を超えて「マジョリティ(多数派)」になる時期を計算してみようと思いたったことから始めたものですが、その結果、私のパソコンは“青ざめるような”絶望的な未来を描き出してしまいました。
先日、我が家において娘たちに、このシミュレーションの結果を示し、運命の出会いなどというものをけっして期待してはならない時代に突入してしまったことを、こんこんと説明しました。そして、「どっちを選んでもよいが、いずれにしても、今のうちに『決断』と『覚悟』はしておけ」と、言い含めました。
次回のコラムでは、娘たちに行ったプレゼンテーションの内容を正確に再現してみたいと思います。お楽しみに。
(文=江端智一)
※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。
註1 宇宙戦艦ヤマト
註2 計算に用いたプログラムとエクセル表(未整理)はすべて公開しています。
註3 統計局ホームページ より (年齢各歳別人口、年齢別死亡数及び死亡率)
註4 今後の社会・経済情勢の変化(国土交通省)