もっとも、大熊議員は「民間事業者と公的機関が競争すると、運営の効率性からして、多分、民間事業者が勝つのだろうという気もしますが、競争させてもいいのではないか」と述べており、民営カジノと公営カジノの併存があり得ると考えているようでもある。いずれにしても、民営か公営かは、カジノ合法化の建て付けの根幹である。よって、誤解や混乱を招かないよう、IR推進法の審議の段階で明確に決着を付けておくべきである。
なお、刑法の賭博罪規定の特別法を制定して民営カジノを合法化することについて、法的な支障は存在しない(国会による広範な立法裁量の範囲内である)。このことは、「私人が行う賭博行為を処罰の対象とすべきかどうかは立法政策の問題であり憲法適否の問題ではない」と判示した昭和54年2月1日の最高裁決定などですでに決着済みである。カジノを合法化するとした場合に民営とするか公営とするかは、基本的には政策的判断による問題である。
●カジノへの入場制限~外国人だけに限定するか?
岩屋議員は、国の内外から多くの観光客を集め、国際競争力のある観光地を形成するという法目的を実現する観点から、入場者を外国人に限定せず、日本人も対象にすべきであると答弁している。もっとも、岩屋議員、萩生田光一議員(自民党)および石関貴史議員(日本維新の会)は、社会問題等のデメリットを最小化するために、厳格なIDチェックをした上で、未成年者の入場を禁止するほか、依存症を防止すべく、自国民に対する自己排除プログラム・家族排除プログラム(本人や家族の同意を得て入場を規制する手法)や入場料の徴収の導入も検討すべきであると答弁している。
●特定複合観光施設の要件
IR推進法案において、カジノは「特定複合観光施設」内においてのみ認められるとされている。そして、この「特定複合観光施設」とは、カジノ施設および会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる設備が一体となっている施設と規定されている。
IRの誘致活動を行っている自治体でも、特に都会ではなく地方では、カジノ施設とそれ以外の施設(会議場施設、レクリエーション施設、既存の観光資源など)を文字通り1カ所に集めて建設することは困難なところが多い。そこで、このカジノ施設とそれ以外の施設の一体性要件が、どの程度厳格に解釈されるのかは、誘致合戦における死活問題として関心が強い。