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カジノ法案審議入り、重要論点を総点検 公営or民営、誘致活動、参入と入場の規制

文=山脇康嗣/弁護士
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●カジノ運営業者の参入規制

 鈴木克昌議員(生活の党)は、「世界貿易機関(WTO)協定等におけるカジノに係るサービスの位置付けや、我が国の産業育成やノウハウ蓄積も重要であること等、さまざまな要請を勘案」すべきであると述べた上で、「IRの整備、運営に当たっては、地域事業者をはじめ、国内外の民間事業者の英知を結集して行われることが肝要」であると答弁し、外資参入を規制するかどうかについては微妙な言い回しとなっている。

 鈴木議員がいう「WTO協定等におけるカジノに係るサービスの位置付け」とは、「サービスの貿易に関する一般協定(GATS)」におけるカジノ(賭博サービス)の位置付けを意味する。そして、おそらくは、アンティグア・バーブーダというカリブの小国とアメリカとが、WTOの場で争った国際的な賭博紛争が念頭にあると思われる。この賭博紛争は、アメリカの賭博規制が外国からの賭博サービス提供を制限しており、GATS条項およびGATSに関するアメリカの自由化約束に違反しているとして、アンティグア・バーブーダが、WTOの紛争解決手続を要請した事案である。WTO小委員会および上級委員会はともに、アメリカの賭博規制はGATSに違反していると判断した。日本は、当時のアメリカと違って、GATSにおいて、賭博サービスについて自由化約束を行っていない。したがって、IR法において、外資規制を行ったとしても、直ちにGATS(市場アクセス条項、内国民待遇条項)違反となるわけではない。また、賭博事業を営む権利が、憲法上保障されているわけではないので、IR法において外資規制を行ったとしても、その内容が著しく不合理な差別でない限り、立法裁量として許容される余地はある。

 しかし、魅力あるIRを実現するためには、十分な経験とノウハウのある外資系企業の参入を規制してしまうのはやはり望ましくない。カジノ施設からの収益の大半が海外に流出するような事態は避けるべきであるが、これについては、事業者から徴収する納付金の額や使途の明確化および「特定複合観光施設区域」や民間事業者の認定・許可基準を、地域振興や財政改善といった法目的を実現するに足る緻密なものとすることなどによって対応すべきである。

 IR推進法案は審議入りしたばかりではあるが、各党の関心も高く、充実した審議がなされている。秋の臨時国会においても、国民による熟議に資する有益な審議がなされることを期待したい。
(文=山脇康嗣/弁護士)

●山脇康嗣(やまわき・こうじ)
1977年大阪府生まれ。慶應義塾大学大学院法務研究科専門職学位課程修了。東京入国管理局長承認入国在留審査関係申請取次行政書士を経て、弁護士登録。入管法のほか、カジノを含むIR法制に詳しい。現在、第二東京弁護士会国際委員会副委員長。主要著書として、『詳説 入管法の実務』(新日本法規、単著)、『入管法判例分析』(日本加除出版、単著)、『Q&A外国人をめぐる法律相談』(新日本法規、編集代表)、『事例式民事渉外の実務』(新日本法規、共著)、『こんなときどうする外国人の入国・在留・雇用Q&A』(第一法規、共著)がある。

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