オンラインカジノ(インターネットを通じてプレイするカジノ)は、規制の実効性などの点で特殊性があり、ランドカジノ(店舗を構えて運営するカジノ)とは同一に捉えられない側面が多い。従って、オンラインカジノ解禁の是非は、IR法によってランドカジノが合法化され、大きな社会的問題が発生しないことが確認された後の、将来的な検討課題であろう。その際は、オンラインカジノだけに限定した検討ではなく、ソーシャルゲーム、オンラインゲームおよび賞金付きゲーム大会なども含めた、広く統一的なゲーミング法制の構築が検討されることが望ましい。
●日本人成人男性の9.6%がギャンブル依存症
赤嶺政賢議員(共産党)が厚生労働省に対し、日本におけるギャンブル依存症者の数および世界の主要国との比較を問いただしたところ、政府参考人の蒲原基道厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長は、2009年度に実施した厚生労働科学研究の成果によれば、日本のギャンブル依存の割合は、男性が9.6%、女性が1.6%と報告されたこと、またアメリカで1.4%、カナダで1.3%、イギリスで0.8%といった報告があることを答弁した。
蒲原氏が引用した厚生労働科学研究とは、「わが国における飲酒の実態ならびに飲酒に関連する生活習慣病、公衆衛生上の諸問題とその対策に関する総合的研究」を指す。しかし、この男性9.6%という衝撃的な数値は、そもそも同研究報告書においても、暫定値としての扱いであるほか(ギャンブル依存者と健常者を区分けする妥当なカットオフ点について争いがある)、いくつかの疑問も投げかけられているところである。よって、一つの有益な参考資料にはすべきものの、この数字だけが一人歩きして当然の前提とされては、実態を見誤る可能性を否定できない。
なお、大門実紀史議員(共産党)が、4月28日の参議院決算委員会において、パチンコ業者を規制する警察庁に対し、ギャンブル依存症の大半はパチンコが原因であるということを認識しているかと質問したところ、政府参考人宮城直樹警察庁長官官房審議官は、「ギャンブル依存症といわれるものの中にパチンコに対するのめり込みが存在することは了解しております。ただ、それが主要な要因かどうかについては、お答えできない」と答弁した。
いずれにしても、日本に一定数のギャンブル依存症者が存在することは確実であり、憂慮すべき事態である。IR法制においても依存症対策が必須であることに疑いはなく、早急な実態調査が望まれる。