●憲法を殺す安倍首相
こうした中で2月2日、秘密保護法違憲・横浜訴訟の第2回口頭弁論が横浜地方裁判所で行われた。この裁判は、神奈川県内の市民13人が同法の違憲確認と損害賠償などを求めて昨年7月に提訴したものだ。
当日の弁論では、原告のひとり伊藤成彦中央大学名誉教授が意見陳述した。ほぼ満席の傍聴人が見守る中、伊藤氏はゆっくりと法廷中央に歩み寄り会釈して裁判長に正対した。
すでに陳述書は提出してあり、伊藤氏は視力に難があるため、「細かなことは文書を読んでいただき、ここでは根本的なことを述べたいと思います。また、法廷において普通の言葉で述べることは大切です」と陳述を始めた。
「私は、70年近く憲法を支持してきました。現在の首相は憲法を停止しています。しかしながら、憲法が停止されているという自覚が多くの日本人にはありません。首相によって停止状態になっている憲法を生きた状態に戻すよう、裁判所に求めたいのです。
憲法は国の基本法であり、基本法に基づいて生活全般が成り立ちます。その憲法を頭から否定する首相の存在があってはならない。本来あるべき憲法に戻し、法に従ってさまざまなことが行われるという当たり前のことを実現すべきです。そのことを裁判所にお願いします」
法廷における伊藤氏の発言の背景には、秘密保護法の成立・施行や、昨年7月1日の集団的自衛権行使を閣議決定で容認したことなどがある。同盟国の支援を名目に、日本が攻撃されなくても世界各地に自衛隊を派遣して武力行使することを容認した重大な決定が、憲法改正を経ずに19人のメンバーだけでなされた。
本来、憲法の改正は、法にのっとった手続きを経なければならず、その適正な手続きを経ずに実質上の憲法改正をした閣議決定は「無血クーデター」にもたとえられており、「憲法停止状態になった」と表現しているのだ。
このような安倍首相の言動に対し、裁判終了後の会合で伊藤氏は「憲法を殺している」と批判した。さらに、この日の陳述の意図は、裁判所(司法)に対するエールであると語った。
「安倍政権は、憲法や法によって成り立つシステムを崩壊させようとしています。そのシステムを守るのは裁判所の仕事です。裁判所にがんばってくれ、という意味合いの陳述でもあります」
人質事件によって、ますます秘密保護法の危険性が高まる中で、今後も見逃せない裁判である。
(文=林克明/フリージャーナリスト)
第3回口頭弁論は、4月15日(水)13時30分から、横浜地方裁判所502号法廷で行われる。
なお、全国各地でも秘密保護法違憲訴訟は続いている。
・広島訴訟 第1回口頭弁論
2月18日(水)10時00分 広島地方裁判所201号法廷
・東京訴訟 第5回口頭弁論
3月12日(木)15時30分 東京地方裁判所103号法廷