修繕積立金の積立方式は、「段階増額積立方式」が43.4%、「均等積立方式」が41.4%と拮抗した。段階方式は販売時に低額のため不動産会社が打ち出しやすいが、その後の値上げで合意を得る必要があり、将来負担も大きくなる。これに対し、将来にわたり同額を払い続ける均等積立方式は、値上げのたびに議決を取らずに済み、当初から十分な額を確保できる。近年、均等方式が増えているとはいえ、まだ半数に満たない。
計画上の修繕積立金の積立額と実際の積立額の差については、不足しているマンションが34.8%に達した。そもそも計画上の積立額が十分なものとは限らないが、計画対比で不足していれば、維持管理に支障を来たすことになる。
永住志向と最後の看取り
マンションの老朽化問題が深刻化する一方で、マンションの永住志向は前回調査の52.4%から10ポイント以上上昇して、62.8%となった。永住志向が高まっているにもかかわらず、マンションの住まいとしての持続性はなお脆弱といわざるを得ない。
今後は少なくとも60年の長期修繕計画策定を義務付け、良い状態を保ったままマンションを使い切ることを徹底させる必要がある。使い切った後、建て替えや売却が困難な場合には、戸建てと同様、解体しなければ危険な状態になりかねない現実を見据え、解体資金の積み立てを義務付ける措置も必要になってこよう。いわば、マンションの看取りに備えた資金である。
これまでマンションを自主解体した例としては、越後湯沢のリゾートマンションの例(1975年築、2018年解体、30戸)があるが、たまたま積み上がっていた修繕積立金3,500万円を解体費用に充当できたことによる。現行法制では、区分所有権解消(マンションの解散)は、被災マンションや耐震不足以外では、全員一致が必要であり、このケースでは推進役のリーダーの尽力により議決が可能になった。今後は区分所有権解消のハードルを、建て替えと同様、5分の4に下げる必要性がある。
一方、冒頭に述べた野洲市のマンション(1972年築、9戸)は議決できず、自主解体できなかったため、代執行が必要になった。解体費用は請求しても、全額回収できるかどうかはわからない。空家法は、共同住宅や長屋建ての場合、全室空室にならなければ適用できず、このケースでは全室が空室だったため適用できた。今後は居住者がいても危険な状態に陥った場合、強制措置を発動できるマンション版の空家法が必要になるだろう。
今後はこのような制度見直しが必要になるが、管理組合自身が老朽化問題に立ち向かっていく必要もある。今回調査で、建て替えや修繕・改修の方向性が出た管理組合は21.9%に過ぎず、議論を行ったが方向性が出ていない管理組合が16.6%、議論を行っていない管理組合が56.3%であった。新しいマンションほど議論を行っていない割合が高くなっており、それは無理もないが、できるだけ早い段階から議論を始めることが望ましい。
(文=米山秀隆/シンクダイン研究主幹)