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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

「初心者向けリスク限定型投信」という言葉に惑わされるな!高い手数料で割に合わず?

文=大江英樹/経済コラムニスト

 一方、10万円だけ日本株のインデックス投信を購入し、残りを定期預金か普通預金にでも置いておけば、どうなるでしょう。インデックス型投信の手数料はかなり下がってきており、0.2%程度のものも珍しくありませんから、10万円購入すれば毎年の手数料は200円ですみます。つまり同じような運用成果だとしても「リスク限定型投信」を買うと、負担する手数料は40倍にもなるというわけです。

 実際にこの投信は2012年の2月に運用を開始し、現在は1万800円を少し超えるくらいの基準価額になっていますので、100万円を投資していたら108万円強になっています。一方、同じ時期に日経平均連動のインデックスタイプの投資信託を購入したとすると価格は2.3倍ぐらいになっています。当時の日経平均は9700円前後、現在は2万2000~2万3000円ぐらいになっているわけですから、これは当然です。そうすると10万円の投資信託の評価額は23万円ぐらいになっているということになります。預金に置いてあった90万円はほとんど増えていませんから、合計すると113万円ぐらいとなります。「投資初心者向け」と謳っている投資信託の108万円よりも、自分でやったほうが良い成果が出ているのです。

 もちろん、まったく投資せずに預金だけであればそんなに増えることはないわけですから、108万円だって立派なものだといえないことはありません。要は、いずれの場合でも自分の資産の内、10%だけをリスク資産に投資するという点では同じことなのです。リスクを限定するということは、それだけリターンを諦めるということですから、どちらにしても同じ考え方の運用です。そうであれば、何もわざわざ高い手数料のものを買う必要はありません。自分で手数料の安いインデックス型投信を、自分で取れるリスクの分だけ買えば良いのです。

年金運用は「コストの安い方法」が有利

 こうしたタイプの投資信託は、最近では企業型確定拠出年金でも採用されています。企業型確定拠出年金の加入者の多くは投資の経験がないか、あっても初心者の人が多いからこういうタイプのものが向いているという判断で、多くの事業主も自社の商品ラインナップにこういうタイプの商品を入れているのだろうと思います。

 もちろんリスクをどれだけ取るかは人によって違いますから、確定拠出年金の運用で何を選んでも構わないのですが、同じリスクを取るのであれば、できるだけコストの安い方法を選んだほうが、確定拠出年金のような長期の運用においては有利であるということは知っておくべきです。

「初心者向け」「リスク限定」という言葉に惹かれて結局、高い手数料負担を負うことにならないよう、注意することが大切です。
(文=大江英樹/経済コラムニスト)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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