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東京「耐震性なし」マンションの7割が未改修のまま…耐震診断は6割が未実施

文=清談社、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト
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「gettyimages」より
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 日本列島を襲った数々の震災を経て国民の防災意識は高まっており、建設物に対しても高度な耐震性が求められるようになっている。そんななか、1月19日付「現代ビジネス」記事『「巨大地震」で崩壊…日本に「キケンなマンション・建物」が意外と多いという現実』で指摘されている、東京都にあるマンションのうち耐震改修済の物件がわずか26%しかないという内容が一部で話題を呼んでいる。2021年12月末時点の集計データによると、耐震診断は6割が未実施。実施済みは3割ほどで、そのうち5割が「耐震性なし」と診断されたものの、改修に至ったマンションは26%ほどにとどまっているという。マンションの耐震対策の実態について、住宅ジャーナリストの山下和之氏に解説してもらった。

「マンションなどは法令によって定められた耐震基準に基づいて建てられますが、何度か改正されており、現在は1981年の建築基準法施行令の改正までに建てられたものを『旧耐震基準』の建物、以降のものを『新耐震基準』の建物と呼んでいます。国土交通省が5年に1回、 全国のマンションを対象に行っている『マンション総合調査』アンケートによると、回答のあった1688棟のうち旧耐震基準で建てられているマンションの割合は18.0%。そのなかには規模の大きなマンションも含まれており、特に500戸以上の大規模マンションだと17棟中9棟は旧耐震基準の建物という結果になっています」(山下氏)

 旧耐震基準の建物は、築年数でいえば40年以上の物件だ。

「ただ、実際の耐震性というのは築年数だけでは判断できないものがあります。1981年以前の旧耐震基準で建てられたマンションでも、強固な構造をしていて新耐震基準の審査をしていないだけという場合もありますし、逆に1981年以降に建てられていても、その後の老朽化や大規模修繕の未実施などで維持管理がしっかりできておらず耐震性に不安のある物件も多いと思われます」(同)

 法律的には、現行の新耐震基準を満たしていなくても建物を改修する義務はないとされ、管理組合やデベロッパー側の自主的な判断に委ねられている。しかし、耐震性を高めるための大規模修繕工事は住民のコンセンサスが取りにくく、なかなか進まないという現状がある。

「耐震強化するためには一戸あたり50万~100万円の費用がかかりますが、平均的な修繕積立金だけではとても足りません。古い物件になると、住んでいる人も高齢者やリタイア世代が多くなっていて、やらないといけないのはわかってるけど、お金がないからできないということが多い。また、分譲マンションだとオーナーと賃貸者で意見が合わなかったり、空室や権利者不明の物件があるなど、足並みが揃わないケースも多いので、なかなかまとまりません」(同)

耐震性能を見極める方法

 では、これからマンションを購入・賃貸する時に、その物件の耐震性能を見極めるには、どういった点に注目すればいいのだろうか。

「建物の耐震性を推し量る基準として『耐震等級』があります。等級は1から3まであり、1から2になると1.25倍、3は1.5倍の耐震性能があるという計算になります。ただ残念ながら、この耐震等級を取得しているマンションは少なく、取得していても9割が耐震等級1なんです。マンションが耐震等級を上げるためには、柱や梁を太い構造にしなければいけないのですが、これは非常にコストがかかります。マンションはそもそも耐震性が高いというイメージがあり、デベロッパーとしては無理して耐震等級3にしなくても売れるという現実があるので、あまり重要視しないのです」(同)

 また、新たな指標として「長期優良住宅認定制度」もある。これは国土交通省が定めた認定制度で、新築については2009年、増築・改築する場合は16年より開始されたものだ。

「長期優良住宅の認定条件を満たすと、200年間は安心して住めると謳っています。これには耐震性も含まれていて、震度6強の大地震でも壊れないとされています。ですが、制度がまだ新しいこともあり、認定物件はまだ多くない。1戸建てやマンションなどを含めて、日本で新築住宅は年間80万戸ぐらい着工されていますが、そのうち長期優良住宅の認定を受けているのは1~2割ぐらいなのが現状です」(同)

 さまざまな基準があっても、そもそも認定を受けていない物件が多いとなると素人ではなかなか見極められない。それ以外に耐震性を推し量るには、どのようなポイントがあるだろうか。

「まず免震装置を組み込んでいるマンションであれば安全性が高いです。マンションに免震装置や免震設計が多く導入されはじめたのが20年ぐらい前からになるので、築年数も含めて安心できる物件といえるでしょう。また、免震装置の導入されたマンションに住む場合、地震保険の保険料が割引されるのもメリットです」(同)

外観から耐震性を判断も

 さらに、外観からでも、ある程度は耐震性が判断できるという。

「マンション全体の形が、ブロックのような四角四面の立方体のような構造になっているほうが揺れには強く、逆にデザイン性が高い物件だと危険といえます。例えば、雁行型という、各部屋の日当たりが良くなるように位置を少しずつずらして配置されたような建物形状だと、一般的に耐震性能が低いとみなされます。

 もう1つ、見た目でわかりやすいのはピロティの有無ですね。ピロティとは1階部分の壁を取り払って柱だけの構造に仕立て、そのスペースを生かして駐車場やエントランスにしている物件です。これも地震には弱いとされ、実際に阪神淡路大震災の時にはピロティ構造のマンションの倒壊が多かったという報告があります」(同)

 そして見逃しがちなのがマンションの「立地」だ。耐震性において良い立地とは、駅から近いなどの利便性ではなく、どんな地盤に建てられているかで判断する。

「そのマンションが建っている場所の地盤を調べたり、被害予想などをハザードマップで確認してみると、液状化の危険性などを予測することができます。液状化は湾岸部だけでもなくて内陸部でも発生します。東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の時には埼玉県の久喜市やさいたま市の分譲住宅地でも液状化が起こりましたが、そのあたりは河川や田んぼを埋め立てたという立地でした。東日本大震災では、千葉の新浦安が液状化しましたが、そこも埋め立て地です。江戸から昭和初期くらいまでに埋め立てされた地域は、比較的地盤が落ち着いているんですが、戦後の昭和30年代以降に埋め立てが始まったエリアはまだ地盤の強化が進んでないといわれ、耐震性という意味では脆弱とみられています」(同)

 どんなに耐震基準を満たした建物でも、その地盤そのものが弱かったり、液状化してしまっては意味をなさない。安全性の高いマンションを選ぶには、あらゆる指標をみて判断するしかなさそうだ。

「能登半島のある石川県は地震に対して安全なエリアとされていて、地震保険の保険料も1番安かったくらいなんです。兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)では神戸で大変な被害が起きましたけど、地震が少ない関西エリアのなかでも、特に神戸は地震の影響が少ないということで有名でした。それでも被害が起きていることから学べる教訓は、日本には地震に対して100%安全なエリアなどない、ということ。それを頭に入れて、マンションや住居選びをするというのは大事なことだと思います」(同)

 利便性や資産的価値などに比べて、軽視されがちなマンションの耐震性能。改めて見直すだけでも、防災対策の第一歩になり得るだろう。

(文=清談社、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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