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松江哲明の経済ドキュメンタリー・サブカル・ウォッチ! 【第4夜】

累計3200万部の『かいけつゾロリ』を創る作者に感動!

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post_914.jpgあのテーマ曲を聞くだけで高揚感が高まる。
(「情熱大陸HP」より)

――『カンブリア宮殿』『ガイアの夜明け』(共にテレビ東京)『情熱大陸』(TBS)などの経済ドキュメンタリー番組を日夜ウォッチし続けている映画監督・松江哲明氏が、ドキュメンタリー作家の視点で裏読みレビュー!

今回の番組:10月21日放送『情熱大陸』(テーマ:絵本作家・原ゆたか)

 累計3200万部ということは、一冊900円で著者印税が10%として90円×3200万で……に、にひゃくはちじゅう億!! こんな金額一生かかっても使えるとは思えないし、一体全体どうやったら手にすることが出来るのだろう。自主制作でDVDを販売するようになってから、経済に興味を持つようになった。

 よって番組の中で具体的な数字が提示されるとつい計算してしまう。本が売れないと言われるようになってずいぶんと経つが、ちゃんとヒット作を出す人はいるのだ。

 児童書最高の販売部数を誇る『かいけつゾロリ』の著者、原ゆたかはロッカーで変身をしていた。妻に何度も「『原ゆたか』になっているよね」と確認をし、丸メガネと柄のシャツを着て、胸には『かいけつゾロリ』のバッヂを付ける。僕は「原ゆたか」に「なってる?」の意味が分からなかったが、その後に続く映像を見て納得がいった。子どもたちが集まるサイン会で、彼は一人ひとりに話しかける。

「何冊くらい読んだ?」と聞けば子どもは「だいたい読んだ」と答える。さらに 「『かいけつゾロリ』を読んでる時が楽しい」と答えた子には「嬉しいこと言ってくれるねー」と喜ぶ。口調が子どもに近く、喜びを共有してるかのような会話だった。彼はそんな視点を持ってるからこそ、子どもに人気のある絵本を生み出せたのだろう……と思っていたら、原ゆたかは番組が終わるまで「なってる」ままだった。

 六本木にあるというマンガに溢れた自宅兼仕事場でも、母親と家族を連れたプライベートのハワイ旅行でも、古いマンガやゴジラのフィギュアに目を輝かせる中野ブロードウェイでの買い物も、カメラが回らない風呂場、寝室でもイラスト入りで原ゆたかを演じ切る。さらには毎日一時間使うという酸素カプセルに入ってる間も「お茶目な絵本作家」を崩さない。生活のすべてが新作のアイデアになっているのだ。テーマが女スパイ物と決まれば、日本語吹き替えの『007』のDVDを再生し、子どもと原ゆたかが喜びそうなアイデアを探す。「自分が今、子どもだったら『これは読むな』と思うものを書いてきた」と彼は言う。この言葉に子どもたちが目を輝かせ、児童書最高部数を誇り、大人も「『かいけつゾロリ』だったら仕方ない」と思わせる秘密がある気がした。

 本にはさまざまな工夫が凝らされている。ページを折ることで絵が繋がったり、突然迷路や間違い探しが現れたり、カバーに作者の似顔絵が隠されていたり……とにかく 限られたページと「いたずらを仕掛けるものの、最後には人助けになってしまう」というルールを守りつつ、本をめくるワクワクに勝負をかける。「自分も本を読めない時期があったから、読めない子のために書こうと思って」と絵を描きながら語る原ゆたかの目は、カメラに映されることはないが、真剣そのものに見えた。

 そして僕が心底感動したのは、番組では触れられなかったが、2ページに渡って、コマをはみ出してまで描かれた巨大なウンコだった。そこにはひらがなでこう注意書きがされていた。「おとなは おはなしを よまずに このページをみつけては、げひんな 本を きめつけます。くれぐれも この ページだけは みせないように しましょう」と。子どもはウンコが大好きだ。僕も好きだった。身体からこんな臭い物が出てしまう不思議と、ウンコウンコと叫ぶと大人が怒るのがおかしかったから……そんな理由を思い出したが、どうでもいいことだ。

 それより大切なのは原ゆたかが子どもと連帯感が持てることを信じ、大人には怒りを持って訴えているということだ。きっと長いキャリアの中で、自作のある一部分だけを非難された悔しい経験もあったのだろう。番組内では「原ゆたか」というキャラクターに徹していた、彼の本音が垣間見えた数秒のカットだった。そしてその思いは、きっと番組制作者も共有したはずだ。だからあてインタビューではこういったテー マに触れず、人気児童書作家の創作のみに向き合ったのだ。その気持ち、よく分かる。大人の理屈ではなく、子どもの視点を忘れない『情熱大陸』だった。
(文=松江哲明/映画監督)

松江哲明(まつえ・てつあき)
1977年、東京都生まれ。映画監督。99年に在日コリアンである自身の家族を撮った『あんにょんキムチ』でデビュー。ほかの作品に『童貞。 をプロデュース』(07年)、『あんにょん由美香』(09年)など。また『ライブテープ』(09)は、第22回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で作品賞。

BusinessJournal編集部

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