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出産させないシステムが完成した日本~破滅衝動=結婚をなぜ越えられないのか?

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 仕事と出産の両立が絶望的に困難なのは、誰がどう考えたって明らかです。しかし、生きていくためには仕事をしなければならず、仕事を続けるのであれば出産は選択できない。本来、出産・育成支援システムである「結婚」は、昨今の不景気によって、その機能を十分に発揮できる状態にありません。つまり、現在の私たちの社会は「子どもを産ませないシステム」として、美しい閉じたループを描いて完成しているのです。

●先進国でも合計特殊出生率2.0を達成している国

 しかし、子どもに経済的価値がなく、負債として把握される先進国にあっても、人口減少が起こらない合計特殊出生率2.0を達成している国もあります。アメリカが2.1、フランスが2.0 なのに対し、日本は1.4で、192カ国中、下から3番目という悲惨な位置にいます(合計特殊出生率ランキング、国別順位 – WHO世界保健統計2012年版)。

 まず、アメリカのケースですが、アメリカ国内で産まれた子は、親の出生国に関係なく無条件でアメリカ国籍を取得できます、たとえその親が不法入国者であろうとも関係ありません。このように、出生率の実態は移民の増加の影響が大きいと考えられ、日本の場合と比較しにくいので、ここでは検討をしません。

 一方、フランスは、2011年に合計特殊出生率2.03という驚異的な数字を叩き出しています。内閣府の少子化白書の「アフターサービス戦略」は、おそらく、フランスをケーススタディとしていることは、ほぼ間違いないと思います。(「フランスとドイツの家庭生活調査」より)

 しかし、フランスの政策と日本の「少子化白書」の内容には、決定的に違うことが1つだけあります。

 「フランスでは、同棲による婚外子が一般的である」という点です。婚外子とは、法的に婚姻関係にない男女から産まれた子どものことをいいます。フランスで産まれてくる子どもの半分は婚外子ですが、日本での婚外子は出生全体の1.9%(2003年)にすぎません。(「先進諸国における婚外子増加の背景」より)

 フランスでは、1990年代に、婚外子の親権共同行使が原則化されて、子どもの養育のための経済的負担は婚姻内外、離婚の有無を問わず男女平等に求められ、支払わない者に対しては国が強制徴収を行うという徹底ぶりです。比して、我が国ではどうでしょうか?

●婚外子が受け入れられにくい日本

 内閣府の「少子化白書」の「3本の矢」の最後の矢は、「(3)結婚・妊娠・出産支援」でした。この項目から「結婚」は外されていません。そもそも、我が国は、婚外子を差別的に扱うことを法定してきたという歴史的経緯があり、ようやく最近になって、婚外子の遺産相続分を結婚した夫婦の子の半分とした民法の規定が違憲と認定されるに至ったという状況にあります。

 一方、お隣の国、韓国の事情を見てみますと、合計特殊出生率は1.3で、日本よりさらに悪いです(数値でワースト2位。ちなみに、最悪値は、ボスニア・ヘルツェゴビナの1.1)。この成績の悪さは、「婚外子」との関連があるのかもしれないと思い、調べてみたところ、内閣府のウェブサイト中、少子化対策に資料が出ていました。(「第6章 日本と各国との比較 1.日・韓比較」)

 簡単にまとめますと、「韓国・日本ともに、婚外子に抵抗がある人は8~9割いる」となります。婚外子に抵抗がある人が多数派である以上、我が国において、「結婚」を抜きにした「妊娠→出産」のプロセスは、選択しにくい状況にあることがわかります。

 そして、前述した通り、現在、この「結婚したいが、結婚したくない」という矛盾したロジックを有する非婚者は、今後も改善されることなく、さらに増加することが予想されています。(参照:「“結婚”未来予測~増え続ける生涯未婚率、今年生まれる子どもの半分は結婚を選択しない?」)

 結果として、我が国では「結婚」という最初のハードルを越えられず、その結果、「出産」に到達することができないようになっているのです。

 では、今回の内容をまとめます。

(1)内閣府の「少子化白書」によれば、少子化対策の趣旨は「日本経済の救済」と「国民の幸福」であり、そのアプローチのメインは、「出産後のアフターサービス」にある。

(2)現在、未婚者や子育て世代の夫婦にとって、独身でいることや子どもの数を少なく維持すること――つまり「少子化」こそが、最適戦略であり、また、現在の日本は「子どもを産ませないシステム」として完成している。

(3)一方、先進国であっても、結婚を前提としない出産に対して差別的な法律や制度がなく、国民の合意形成に至っている国(フランス、北欧等)の出生率は高い。

 さて、前回、エンジニア的観点から「子どもをつくる技術」(性交渉の意味ではない)の最新動向についてお話しすると申し上げていましたが、今回、これを記載すると紙面が倍になりそうだったので、次回(最終回)にさせていただきます。併せて、現在の生殖技術とその技術の導く恩恵と悲劇、そして今、私たちに求められているパラダイムシフトについても、お話しさせていただこうと思います。
(文=江端智一)

 なお、図、表、グラフを含んだ完全版は、こちらから(http://biz-journal.jp/2013/11/post_3295.html)、ご覧頂けます。

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(今回はhttp://www.kobore.net/kekkon.html)へお寄せください。

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