「午後になると眠気が襲ってくる」「やる気が湧いてこない」「ちょっとしたことでイライラしやすくなった」…これらの症状の原因の一つとしてあげられるのが「睡眠不足」です。
睡眠不足がたたると仕事の作業効率が落ち、判断ミスも増えてきます。でも、なかなか解決する方法が見当たらない…。そんなときは「パワーナップ」を実践してみてはいかがでしょうか。
1日8時間睡眠は本当に理想的?
よく、理想的な睡眠時間として「8時間」がいいといわれますが、果たして8時間睡眠はベストなのでしょうか? カリフォルニア大学サンディエゴ校のダニエル・クリプキ教授の調査では、もっとも長生きしたのは、睡眠時間が7時間の人たちだったのです。さらに、高齢者に絞った調査ではもっと短い5時間~6.5時間という結果になりました。ここからクリプキ教授は「一晩に6時間半から7時間の睡眠が理想的だ」と結論づけます。
しかし、「6時間半から7時間じゃ足りない」という人もいれば、「そもそもそんなに長く睡眠時間がとれない」と悩む人もいるでしょう。それをカバーするために、精神科医の西多昌規さんが『脳と体の疲れをとる仮眠術』(青春出版社/刊)で提唱しているのが「パワーナップ」です。
「パワーナップ」が作業効率を劇的に高める
「パワーナップ(Power nap)」とは、アメリカのビジネスシーンでとり入れられている「短時間の積極的仮眠」です。「nap」は昼寝を意味する言葉で、「Power up」をもじってつけられました。仮眠時間はだいたい15分~20分程度。
日本でも近年、午後のちょっとした仮眠がビジネスや仕事の効率に与える良い影響が叫ばれていますが、まだまだ浸透しているとはいえません。西多さんが勤めるクリニックには「日中の強い眠気」に悩みを感じている人が数多く来院するといいます。この「パワーナップ」はそうした悩みを吹き飛ばしてくれる一助になる可能性があります。
大企業では当たり前になりつつある「パワーナップ」
「パワーナップ」は世界的企業で制度として続々と採用されています。有名どころでは、スポーツ用品メーカーの「ナイキ」、検索最大手の「グーグル」、アイスクリームで有名な「ベン&ジェリーズ」、インターネットサービスの「AOL」など、社員用の静かな仮眠部屋を用意し、「パワーナップ」の活用を奨励しています。
特に「NASA」では、1995年頃から「NASA Naps」と呼ばれる仮眠研究を行い、記憶や注意力などを評価する認知機能テストなどが行われました。宇宙飛行士の場合、宇宙に行くと平均で30分から2時間半、睡眠時間が短くなるとされ、睡眠不足は業務の遂行だけでなく、死の危険にもつながる大問題。そして、この研究の結果、ワーキングメモリーという認知機能が仮眠の恩恵を受け、特に宇宙飛行士にとっては26分という長めの仮眠がパフォーマンスを34%向上させることがわかったのです。
どうやって「パワーナップ」の時間をとればいい?
睡眠不足を感じている人、午後になると強い眠気を感じてしまう人はすぐにでも実践したい「パワーナップ」。しかし、「昼寝なんて気まずくてできない」という人もいるはず。では、どうすればいいのでしょうか。
工夫したいのは、仮眠をとる場所です。人がいないところや、寝ていても目立たない場所がいいでしょう。本書では会議室やロビー、カフェなどがあげられていますが、仮眠している姿を見せられないといった状況におすすめなのが、「個室トイレ」です。ただ、さすがに個室トイレで15分も座っていられません。その場合は「少しだけリラックスする」くらいの気楽な気持ちが、「トイレナップ」のコツだと西多さんはいいます。
また、しっかりと「パワーナップ」の時間を確保するために、お昼休みは逆算して計画を立てたいもの。仮眠から目が覚めたあと、準備時間を5分はとりたいですから、20分前後を「パワーナップ」の時間として事前にとっておきましょう。
「パワーナップ」は、アメリカのコーネル大学社会学部のジェイムズ・マース教授が最初に提唱したとされ、マース教授の著書はアメリカでベストセラーになったほか、日本でもテレビ番組で紹介されるなど、大きな話題を呼びました。
この『脳と体の疲れをとる仮眠術』は「パワーナップ」の新たな入門書というべき一冊に仕上がっており、眠気に悩むビジネスパーソンたちにとって重宝するはずです。
(新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。