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複雑化する同族企業の「後継者問題」(3)

優秀な経営者は「普通ではない家庭」から生まれる 「経営の精神」を鍛える後継者教育を

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●日本だけでなく欧米でも存在感が大きいファミリービジネス


「普通でない」という点をファミリービジネスの家庭の条件とすれば、それには、真逆だが2つ意味がある。一つは、庶民では考えられないほど裕福な暮らしを送っている。もう一つは、一般家庭では教育しようとしても難しい帝王学を物心がついた頃から教授される、という点だ。後者を行っていない創業家も多いだろうが、理想としては、専門家の知恵も借りて徹底した英才教育を行えば、異次元の才能を持った経営者が出現する可能性もある。その人は、必ずしも代々の事業を継承しなくとも、イノベーションを起こすかもしれない。それが、今、日本の大企業にとって焦眉の急とされているリロケーション、つまり既存の経営資源を応用したり、企業の合併や買収(M&A)により新事業を構築する「転地」で功を奏す可能性大である。

 創業者一族が経営を代々続け、現在も関与しているという点だけに絞り、株主比率にこだわらなければ、日本企業のうち80%、上場企業の40%はファミリービジネスである。「プロの経営者」のスカウト合戦が目立つアメリカも、実はファミリービジネス大国である。ラグジュアリーブランドを多く持つヨーロッパは、ファミリービジネスの本家みたいな存在である。つまり、世界経済において、ファミリービジネスの存在は非常に大きいのである。マスコミで、とかくスキャンダルばかりクローズアップされるので見落としがちだが、実は総じてファミリービジネスのパフォーマンス(業績)は良い。リーマンショックが起こった2008年9月以降も、比較的堅調に推移した企業の中にはファミリービジネスが多かった。その結果、ファミリービジネスに注目する経営学者が増え、トップジャーナル(一流学術誌)でも、これに関する論文が目立つようになってきた。今や大きな研究テーマの一つになりつつあるといえる。

 こうした流れの中でファミリービジネスの後継を前向きに考えることは、現実認識としても重要である。マスコミの一般的論調からすれば、「プロの経営者に任せればいい」と結論づけたいだろうが、プロの経営者が社長を務める会社がすべてうまくいっているわけではない。後継者の世襲を考えているファミリービジネスにとって、「間違った教育」は絶対に許されない。なぜなら、普通の家庭では考えられないほど社会的に大きな損害を与えるからだ。韓国・大韓航空の副社長(当時)が、自社機内で客室乗務員のナッツの出し方が悪いとして航空機を引き返させた「ナッツ・リターン」は、それを象徴する事件となった。この事件の主役となった元副社長のような同族後継者を生まないために、普通の家庭で育った一般の人たちが納得する人物を育てる難しい課題を現在の創業家は突きつけられている。MBA(経営学修士)で教授するような合理的なサイエンスを身に着けることは必要条件だが、それに加えて経営の精神に関する後継者教育がますます重要になってきたといえよう。まさに、「経営は人なり」である。
(文=長田貴仁/岡山商科大学教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー)

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