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複雑化する同族企業の「後継者問題」(3)

優秀な経営者は「普通ではない家庭」から生まれる 「経営の精神」を鍛える後継者教育を

文=長田貴仁/岡山商科大学教授、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー

「親の背中を見て子は育つ」と言われるように、後継者教育では経営者である父の存在が大きいとされている。間違った指摘ではないが、成功した経営者たちにインタビューすると、母から受けた影響、母からの教えについてとうとうと話すことが少なくない。これは、家で一緒にいる時間が多い母が伝えた「家庭教育の方針」であると理解できる。まさに、経営教育のベースになるものである。大学教育に当てはめれば、専門教育の基盤にあるリベラルアーツ(一般教養)といえよう。こうした「家庭の影響」が大人へと成長する過程で、教師や友人だけでなく、広く家庭外の人々から受ける「社会の影響」と相乗効果を発揮するようになる。ただ、その結果は、生まれたときから経営者になることが求められている人と、そうではない人とでは当然異なるものとなる。

 複雑化する情報化社会においては、一見、さまざまな教育の選択肢があるように見えるが、子供を経営者に育てなくてはならないファミリービジネスの創業家も、画一化された「時代の流れ」に流されてはいないだろうか。この背景には、ファミリービジネスの成否を左右する家庭の存在自体が大きく変化してきているという現実がある。

 かつて、企業を経営する富裕層といえば、大きな屋敷に3世代、4世代同居というケースが珍しくなかったが、今やそうした層でも夫婦と子供からなる核家族へと急速に変化している。スープの冷めない距離に住んでいるかもしれないが、家で日常的に創業者が孫に経営の話をするような機会はめっきり減った。さらに、少子化により兄弟間で家の事業について話すことも少なくなっている。さらに、家父長制度の崩壊による意識の変化、対等になった夫婦関係や離婚の増加は、ファミリービジネスにおける「家庭の影響」を大きく変えた。見方を変えると、ファミリービジネスを営む家庭も「普通の家庭」になりつつあると考えられる。

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