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小林敬幸「ビジネスのホント」

超有望のドローン市場、実はビジネス的な“うまみ”ゼロ?ルンバを超える秘策がある?

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 また、一部には、「コンデンサの品質が悪く、累計飛行時間が一定以上になると墜落する」といううわさもある。一言でいえば、「まだ、おもちゃの域を出ていない」のだ。

 とはいえ、パソコンがそうだったように、画期的なイノベーションも、最初は「おもちゃ」と批判されるものだ。ドローンの現状も、決してバカにするべきではない。

 技術的には、墜落した時にパラシュートを開くなどの危機対応、突風に対する強さ、飛行時間の延長、GPS以外による位置確認の精度、そしてそれらを制御するOS、ミドルウェアの開発などが課題になる。

 なぜ、日本の大手電機メーカーは、ドローンに本格的に取り組まないのだろうか。日本企業がドローンに参入しない理由は、法制度の未整備だけではない。

 アップルやグーグルにノウハウがない、モーターと駆動系部品において、日本企業はビデオデッキなどで技術の蓄積がある。「小さく」「軽く」するのは、日本企業のお家芸だ。突然の墜落を防ぐための、経年劣化に対する品質管理も得意だ。実際、日本の大手メーカーの技術者が、開発中のドローンの飛行実験を無料動画共有サイト「YouTube」にアップしていたこともあった。要するに、技術的には十分参入可能なのだが、ビジネス上の障壁があり、本格的に取り組むことができていないのだ。

 首相官邸と善光寺の事件によって、ドローンの規制問題が盛んに議論されるようになった。確かに、法制度が未整備であることや、墜落による人身事故のリスクを考えると、日本企業としては本格参入がためらわれるだろう。この分野においては、適正な規制を迅速に進めることが、産業の発展に役立ちそうである。

 しかし、それだけでは日本企業が新規参入しない理由としては不十分だ。ビデオや4Kテレビなど、これまでもさまざまな分野で法整備が遅れたにもかかわらず、日本の電機メーカーは革新的な商品を開発してきた。

実はビジネスとして難しいドローン

 日本企業は、「本腰を入れ、経営資源を投入してドローンに参入したとしても、その巨大な市場で十分な収益を得られない」と見ているのかもしれない。

 冷静に考えると、テレビやスマホのように各家庭や個人に一台ずつドローンが売れる、という状況は想定しづらい。せいぜい、官公庁や各自治体に一つあれば十分であり、測量用途にしても、会社が一台持つか、レンタル会社から借りてくるようになるだろう。つまり、うまく事業が立ち上がったとしても、製造販売できる量には限りがあるということだ。

 実際、ドローン市場の成長を予測するすべての調査は、製造だけでなくドローンを使ったサービスを含んで推計しており、製造よりサービスの市場規模のほうが圧倒的に大きいとみている。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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