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荻原博子「家庭のお金のホントとウソ」

個人年金など入ってはいけない…損するリスクだらけ、致命的な欠陥も

文=荻原博子/経済ジャーナリスト
個人年金など入ってはいけない…損するリスクだらけ、致命的な欠陥もの画像1「Thinkstock」より

 あるインターネットのアンケートでは、「公的年金があてにならない」と思っている人が約8割いました。悪化する公的年金の状況を見ると、このアンケートの結果はもっともだと思いますが、困るのは「だから、個人年金保険に入りましょう」という方向に誘導されてしまうことです。

 私は「今、個人年金になど入る必要はない」と主張してきました。そこで、3回に分けて「なぜ今、個人年金に入ってはいけないのか」という話をしたいと思います。

 まず、「個人年金」には大きく2つのタイプがあります。さらに「年金タイプ」と呼ばれる商品も含めると、3つに分けられます。

 個人年金の2つのタイプとはなんでしょうか。ひとつは、「今、月々○○万円払えば、将来必ず毎月○○万円もらえます」という、従来型の「個人年金」。もうひとつは、あらかじめ支払った保険料を運用して、その運用次第で将来もらえる年金額が変わる「変額個人年金」。

 今回は、まず従来型の個人年金について見てみましょう。個人年金にもいろいろありますが、ここでは、かなり利回りが高いと評価されているある民間保険会社・S社の個人年金について見てみます。

 この保険は、たとえば20歳の男性が月額2万円の保険料を払い込んでいくと、60歳までに960万円払い込んで、それから10年にわたって年121万9600円、つまり月約10万円の年金がもらえるというもの。返戻率は127%です。

 こう聞くと、「月2万円支払って老後に月10万円もらえるなら、老後が安心」とおトクな気がしてきます。しかし、それは大間違いです。

銀行預金と比べて“金利1000倍”?個人年金の罠

 なぜなら、正確にいえば「40年間毎月2万円支払って、60歳から10年間毎月10万円ずつもらう」ということなので、保険料を払う期間のほうが、もらう期間よりも4倍も長い。それを考えると、おトク感はグッと低くなります。

 次に、これを銀行預金の利回りに当てはめてみましょう。月2万円を40年間積み立てて年121万9600円を得るには、1年複利では利回り1%で増えていくことになります。

 今、銀行の金利は0.001%なので、1%で運用されるのであれば、金利は銀行の1000倍ということになります。これなら魅力的だと思う人もいることでしょう。

 しかし、金利については保険と貯金で大きく違います。保険の運用利回り(予定利率)は、加入したときの利率が最後まで適用されます。40年間の契約なら、40年間は利率が変わりません。しかも、個人年金の場合は途中で解約すると元本割れする危険性があります。

 一方、貯金の場合は、一般的には金利が上がれば、その上がった金利が適用されていきます。郵便局の定額貯金のように「10年間は同じ金利」というものもありますが、金利が上がれば解約して預け直せば問題ありません。

 今のような低金利が40年間続くのであれば、保険もおトクといえるかもしれませんが、途中で金利が上がればそうはいえなくなってしまいます。ちなみに、郵便局の定額貯金は1980年代には金利8%をつけており、再び金利が上昇しないとは誰にも言い切れません。

 今は「金利1000倍」の開きがありますが、仮に金利が上がれば、途中解約すれば元本割れの可能性がある個人年金は不利になります。

荻原博子/経済ジャーナリスト

荻原博子/経済ジャーナリスト

大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。

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