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救急出勤激増で8千円自己負担も…夜間に医師が患者宅往診の画期的事業広がる

文=吉澤恵理/薬剤師

軽症との判断の難しさ

 初診時選定療養費を請求されるような緊急性の低い症状とはいっても、急な発熱、腹痛、ぎっくり腰や捻挫などは、身動きがとれず通院も困難のため、患者にとってはつらく心細いものである。特に都内では、年齢問わずひとり暮らしの割合が高く、また看病や車を手配して救急外来へ連れて行ってくれる親族などが近くにいないという人も多い。そのような背景が患者本人の不安を増長することは容易に想像できる。こういった社会のあり方が「救急車のタクシー利用」現象が生んでしまう要因のひとつだろう。

 こうした医療実態を受けて菊池氏は、患者宅へ医師が直接赴く事業、ファストドクターを立ち上げた。患者に寄り添う一方で、増え続ける夜間の二次・三次救急医療機関の負担、救急車の出動件数の低減にも貢献するのが目的だ。現在、ファストドクターは東京23区及び多摩地区の一部で往診事業を行い、約30名の医師が在籍している。今後は、千葉、埼玉エリアに往診事業を拡大していく予定だ。

ファストドクター診察までの流れ

 電話またはウェブフォームから問い合わせ・申し込みができる。診療時間になると受付オペレーターから折り返しの電話があり、重症度や緊急度に応じてトリアージ(優先度が決定)される。

 往診対象は、一次救急患者とカテゴライズされ、夜間の往診にもかかわらず、採血、インフルエンザ、ポータブルX線検査などの各種検査を受けることができる。一方で、専門治療の必要性や緊急性の高いケースと判断された場合は、高次機関への紹介も受けることができる。救急診療の必要性なしと判断された場合は、医師から電話で適切な助言を受けることもできる。

 菊池氏は、「患者本人では判断が難しい症状もあるため、小さな症状でも躊躇せず相談してほしい」と言う。

 往診が確定すれば、後は自宅で待つだけだ。医師が到着したら、診察、検査、処置、処方(薬)の提供まで受けることができる。通常、救急外来での薬の処方は日数が限られるのに対して、内服薬から吸入薬まで、数多くの治療薬の処方を症状の安定に必要な日数分を家庭で受けることができる。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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