近年では実在する町の風景が、劇中でリアルに描写されて登場。その背景に興味を持った作品のファンが現地を訪れる――アニメやマンガ、ゲームに興味がなくても、テレビや新聞といった一般メディアでニュースとして取り上げられるので、耳にしたことがあるという人も多いであろう「聖地」「聖地巡礼」。
アニメやゲームの舞台=「聖地」として登場した自治体が、観光振興の資源としてコンテンツ供給元(アニメの製作委員会や、出版元など)と協力関係を結び、多種多様な試みを催すことも珍しくなってきているが、なかでも熱いのが埼玉県だ。
「霊地」「聖地巡礼」という単語が定着するのに大きな役割を果たした『らき☆すた』(埼玉県鷲宮町:現久喜市)、今や国民的アニメの『クレヨンしんちゃん』(春日部市)、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(秩父市)など、埼玉を舞台としたアニメやマンガ作品の枚挙に暇がないほど。そんな埼玉アニメ・マンガで、現在最も活発な動きを見せているコンテンツのひとつが『ヤマノススメ』。

女の子4人のゆるふわ登山・アウトドアライフを描いた『ヤマノススメ』は、イラストレーター・しろの同名マンガを原作に、まず2013年1月から1話5分のアニメ・全12話を放送。ショートアニメながら好評を博したことで、14年7月から12月にかけて、放送枠を15分に拡大して全24話を放送。またもや高い評価を受けて、今秋からはOVAを発売&イオンシネマにて上映開始、そして18年にはTVアニメ第3期の放送を控えているという、根強い人気を獲得したアニメだ。
『ヤマノススメ』の舞台として描かれている埼玉県・飯能市も、活発に数々の企画を実施。昨年度からはふるさと納税の返礼品にも『ヤマノススメ』グッズを採用するなど、積極的にコンテンツとの協力体制を築いているが、もともとお堅いイメージがある自治体側は、どうアニメ・マンガコンテンツに向き合っているのか。アニメやマンガに興味がない市民から苦情の声などあがったりはしていないものか。飯能市・市民生活部賑わい創出課に、『ヤマノススメ』との取り組みについて尋ねてみた。
「まず最初は11年ごろに、アニメの製作委員会さんのほうからご連絡をいただきまして。飯能市が舞台のマンガをアニメ化したいということで、制作協力というか、ロケハンに協力させていただきました――原作マンガで描かれていた場所は当然として、新たな観光スポットになり得るのではないかというオススメスポットをご案内するところから始まり、市側でも作品のPR活動を始めました。
こちらとしても当初から前向きでした、何せお隣の秩父市が舞台のアニメ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』がちょうど盛り上がっていたのを、横で拝見していましたから。そういったお話があればぜひ活用しなければ、という認識が担当者には当初からあったみたいです。県内の自治体が先行していたのはとても大きかったです」